研究課題/領域番号 |
23740174
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大田 晋輔 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (60548840)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 実験核物理 |
研究概要 |
当該年度はアクティブターゲットの改良を行ない、鉄近傍元素における B(GT+) 測定手法の確立を目指した。まずアクティブターゲットの改良では、低エネルギー反跳粒子を測定するための読み出しパッドの製作を行なった。読み出しパッドの形状とサイズは、1. 飛跡の角度が決定でき、2. 位置および角度分解能が十分であることを条件に、モンテカルロシミュレーションを用いて決定した。その結果、設計性能として 300 keV の陽子に対して角度分解能 30mrad 位置分解能 0.4 mm を持つパッドを製作した。パッドからの信号はプリアンプにて増幅される。プリアンプからの信号波形は本課題にて購入した Flash ADC で読み出した。平行して大強度ビームのトラッキングのためのホドスコープの開発を行なった。1mm角のプラスチックシンチレータを並べファイバーにて読み出しているが、ファイバーのサイズをシンチレータのサイズに合わせ、シンチレータとの接触を改善することにより、検出効率が 70% であったものが 95% 程度まで改善した。さまざまなクロストークは信号処理系により除外することができているが、電気信号への変換後のクロストークが比較的大きいため、検出効率100%が到達できていないと考えており、実用には問題はないものの、この改善は今後の課題である。以上の開発をもとに、放射線医学総合研究所 HIMAC において(d,2He) 測定実験を行なった。今回は手法の確立のため 56Fe ビームをアクティブターゲットに照射し、反跳粒子測定を行なった。ビームはホドスコープにより位置測定し、アクティブターゲットで再構築したビームの飛跡に対する参照とした。現在詳細な解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アクティブターゲットの改良:1MeV以下の粒子測定が可能な読み出しパッドの開発および読み出しのための Flash ADC の購入が当初の計画であった。モンテカルロシミュレーションを用いてエネルギー分解能および角度分解能の評価を行なってパッドの形状およびサイズについて決定し、製作を完了した。また、Flash ADC の購入を行ない信号の読み出しを行なった。ホドスコープの開発:主にプラスチックシンチレータとファイバーの接続部分の改良を行なって検出効率を改善した。大強度ビームの照射化でも1mmの分解能を持ち 95% 以上の検出効率を達成できる検出器となった。(d,2He)反応による B(GT+) 測定実験:放射線医学総合研究所HIMACにおいて 56Fe ビームを用いた B(GT+)測定実験を行なった。これにより手法の確立に必要なデータは得られていると期待できる。以上の状況からおおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
放射線医学総合研究所 HIMAC において取得したデータの解析を進めて (d,2He) 手法の確立を行なう。分解能および二粒子測定の効率について実験データから評価を行ない、実験セットアップの最適化を行なう。その後、56Ni ビーム生成についてテストを行なって、56Ni における B(GT+) 測定を行なう。これまで開発を進めてきた検出器および手法についての成果発表を行なうとともに改善点についての議論を進めて、検出器の完成および手法の確立を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
ホドスコープの改良:現在はクロストークの除去をデータを用いて行なっているが、信号雑音比を改善することによって効率よくクロストークの除去ができるようになり、検出効率の改善が期待される。そのため、光電子増倍管からの読出し基板の改造が必要であるため、この基板を製作する。また、これまでの検出器の開発成果発表および(d,2He)反応測定についての成果発表のための旅費として使用する。
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