研究課題
2012年度においては超新星スペクトルの研究に重点を置いた。2011年度から引き続き、Ia型超新星の大規模スペクトルデータの解析を行った。この結果は現在Astrophysical Journalに投稿中であり(Folatelli et al, 2013)、査読委員からの二回目のレポートを受けている段階である。このIa型超新星スペクトルの詳細な研究は、これらの物理的性質のより深い理解と宇宙論における距離測定の精密化の二つを目標としている。密に観測された超新星について、初期スペクトルと光度曲線の解析を現在遂行中である。Ib型超新星とIc型超新星の中間的な性質を持つ超新星について、とくに超新星SN2010asを中心とした論文を執筆中である。Kavli IPMUと様々な研究機関との間の共同研究を推進している。この成果は、Ia型超新星の紫外スペクトル(Foley et al. 2012)、IIn型超新星の性質(Stritzinger et al. 2012; Taddia et al. 2013)、非常に近傍で発生したIIb超新星SN2011dh(Bersten et al. 2012)等の論文として発表されている。また、2012年12月には、Kavli IPMUとチリにおける研究機関所属の研究者を中心として第一回目の日本―チリ超新星共同セミナーを開催し、この組織委員の一員として尽力した。これにより、観測・理論双方において日本―チリ研究グループの共同研究が現在行われている。
2: おおむね順調に進展している
観測データの取得と解析において順調に進展しており、今後これら詳細な観測をもとにした論文として結果を発表していく。チリおよびヨーロッパの研究者との共同研究も進展中である。Ia型超新星の解析は、予定通り現段階でほぼ終了している。最近発見された超新星の観測データの整約と解析は現在遂行中である。これらの研究に基づく論文は現在投稿中あるいは執筆中である。
まず、超新星SN2010asなどのIb型-Ic型超新星の中間的な性質をもった超新星についての論文執筆に集中する。これらは、本研究提案と密接に関連する課題である。超新星SN2010asについての研究は、これらに類似する性質をもった超新星の包括的な研究である。Kavli IPMUの超新星研究グループの構成員と共同で、これらの観測データの理論モデル構築を進めており、これによりこのタイプの超新星の物理的性質を理解することを目的とする。また、M. Stritzingerとの共同研究として、特殊な性質を持つ超新星SN2010aeの論文執筆を完了する予定である。Bersten et al. 2012からの発展として、IIb型超新星SN2011dhの親星を突き止めるための研究を行っていく。私は、この超新星が暗くなったのちに超新星が起こった場所の環境を観測することを計画している。爆発した星は連星系をなしていたことが理論的に提案されているが、この伴星の探査が目的である。これにより、どのような進化過程を経て黄色巨星に進化しIIb型超新星として爆発したのか、この謎を明らかにすることを目指している。既にKavli IPMUの超新星研究グループとともにハッブル宇宙望遠鏡とすばる望遠鏡に観測提案を提出中であり、これにより得られる紫外域での観測データから理論的に予測されている青色伴星の存在を確定することを目指している。
2013年度の本課題研究費の一部は、関連する研究会参加と海外の共同研究者の所属する機関に滞在する旅費として充てる。現段階で、2013年6月にギリシャで開催される研究"Massive Stars: from alphato omega"に参加予定である。また、2013年秋にはDenmark、Aarhusに滞在し、M Stritzingerとの共同研究を進める予定のほか、現在進行中の共同研究を遂行するため、チリに渡航・滞在予定である。また、前年度までと同様、私や他のKavli IPMU所属研究者との共同研究を推進するため、海外の共同研究者を招聘する予定である。スケジュール調整次第では、Carnegie Supernova Projectの代表研究者であるM. Phillipsを招聘したいと考えている。また、今年度は複数の論文出版が期待されるが、この出版費にも本課題研究費を充てる予定である。これ以外の用途としては、コンピュータ環境や一般的な研究消耗品に研究費を使用する。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
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