研究概要 |
今年度は昨年度に引き続き、ABJM模型の分配関数の厳密計算と、それに基づくインスタントン補正の解析を行った。3次元球面上のABJM理論の分配関数は超対称性の固定点への局所化の手法により行列模型に簡約することができる。しかしながらこの行列積分は複雑な多重積分であるため、厳密に計算することは難しい。私は名古屋大学の森山氏、DESYの初田氏との共同研究で、この積分を厳密に計算する手法を開発し、チャーンサイモンズ・レベルが1,2,3,4,6の場合に行列のサイズがそれぞれ44,20,18,16,14まで分配関数を厳密に計算することに成功した。 さらに、この結果を用いてABJM模型のグランドポテンシャルに対するインスタントン補正を詳しく解析した。この補正には世界面のインスタントンとD2ブレーンのインスタントンの2種類が存在する。世界面のインスタントン補正は局所P1xP1上のトポロジカル弦理論との対応から結果が知られているが、D2ブレーンのインスタントンについては、今までは厳密に計算する方法が知られておらず、全く新しい結果である。 世界面のインスタントンの係数はレベルがある有理数のときに発散してしまうが、分配関数自体はこのときも有限である。我々はこの発散がD2ブレーンにより相殺されていると考え、この条件から逆にD2ブレーンのインスタントンの関数形を決めることに成功した。また、より一般に世界面とD2ブレーンのインスタントンの束縛状態も存在すると予想し、その効果は結局ABJMの化学ポテンシャルの再定義により吸収できることを示した。
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