研究課題/領域番号 |
23740178
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
奥山 和美 信州大学, 理学部, 准教授 (70447720)
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キーワード | ABJM理論 / フェルミガス / インスタントン / Nekrasov-Shatashvili極限 |
研究概要 |
本年度は、4次元AdS上のM理論に双対な3次元ABJM模型の分配関数の厳密計算と、それを用いたインスタントン補正の解析を行った。 M理論は微視的な定義が未だに確立していない理論であるが、AdS上のM理論はホログラフィーを通じて場の理論を用いて記述できる。場の理論の側の計算は一般には困難であるが、分配関数やウィルソンループの期待値などは超対称性がある場合には局所化の方法により厳密に計算できる。しかしながら、局所化の方法により得られる表式は多変数の複雑な積分であり、M理論に対応する、Nのみ大きく他のパラメーターが固定されている状況の振る舞いを知ることはそのままではできない。しかし、Nについて和を取った大分配関数を考え、それをフェルミガス系と見ることで、M理論の領域における振る舞いを調べることができる。 我々は、このフェルミガス表示を用いて分配関数を厳密に計算する手法を開発し、その結果からABJM模型のインスタントン補正の構造を完全に決定した。インスタントン補正には(1)世界面のインスタントン、(2)膜のインスタントン、(3)それらの束縛状態、の三種類が存在する。ABJM模型とlocal P1xP1上の位相的弦理論の関係により、世界面のインスタントンは通常の位相的弦理論で計算できる。膜のインスタントンは通常の手法では計算できないが、フェルミガスのWKB展開と厳密な分配関数の計算を組み合わせることにより、同じlocal P1xP1上の位相的弦理論のNekrasov-Shatashvili極限により与えられることがわかった。また、それらの束縛状態は量子周期を用いた一般化された平坦座標を用いることにより、世界面のインスタントンに吸収できることもわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ABJM模型のインスタントン補正の理解は本年度の研究で大幅に進み、Nekrasov-Shatashvili極限や量子周期との関係が明らかになった。これは当初は予想もしていなかった結果であり、計画した以上の進展が見られた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ABJM模型に引き続き、同様にM理論に双対なABJ模型の性質を研究する。ABJ模型も位相的弦理論との対応があるため、そこでも量子周期やNekrasov-Shatashvili極限が膜のインスタントンと関係しているかを調べる。また、ほかのM理論と双対な3次元理論についても研究する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は全額を旅費として使用したが、航空運賃が予想よりも安く済んだため次年度使用額が生じた。 次年度も外国での研究会に参加し、前年度未使用額と26年度経費を合わせて旅費として使用することを計画している。
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