研究課題/領域番号 |
23740179
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
高橋 慶太郎 熊本大学, 自然科学研究科, 准教授 (80547547)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 宇宙磁場 / 宇宙背景放射 / ガンマ線 / ブレーザー |
研究概要 |
宇宙背景放射や高エネルギー天体を用いた初期磁場・銀河間磁場の観測的制限に関する研究を行った。前者についてはまず初期宇宙における磁場が生成する非ガウス性に注目し、将来の宇宙背景放射精密観測によって磁場の大きさにどのような制限ができるかを議論した。またWMAP衛星などによりすでに観測的制限があるベクトルモードに注目し、ベクトルモードによる磁場生成とベクトルモードへの制限から得られる磁場の生成量への制限を得ることに成功した。さらに非断熱ゆらぎが磁場を生成するメカニズムを解明し、非断熱ゆらぎへの制限から生成される磁場への制限を導くことにも成功した。以上のような宇宙背景放射と初期磁場生成に関して合計5本の研究論文を出版するに至った。後者は高エネルギー天体から放射されるTeVガンマ線が宇宙空間で吸収されて生み出される2次的なガンマ線を用いて銀河間磁場を観測する手法である。今年度はこれまでに構築してきた方法論を初めて実際の天体観測データに適用し、銀河間磁場に対する下限を得ることに成功した。具体的にはTeVブレーザーよ呼ばれるMkn501のGeV-TeV領域のガンマ線観測データを用いて、GeVガンマ線のフラックス上限が磁場が弱い時に予言される2次的ガンマ線よりも小さいことから10^(-20)Gaussという下限をつけた。これまで複数の研究で銀河間磁場に対する下限が得られてきたがどれも天体の持続時間に大きな仮定を用いており、信頼性はあまり高くなかった。しかしこの研究では純粋に観測データだけを用いて銀河間磁場に下限をつけることに成功したため、信頼性は格段に高くなった。これにより宇宙初期における磁場生成シナリオに大きな情報がもたらされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初期磁場・銀河間磁場の観測・制限については解析・計算、論文出版が当初の予定以上に進展している。また宇宙初期の密度揺らぎによる磁場生成についても順調に進展している。しかし再イオン化による磁場生成については今年度はあまりすすんでいない。これは報告者が今年度より所属が変わり、大学業務によって海外出張に予定通り行くことができず共同研究が進まなかったためである。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き宇宙背景放射やガンマ線を用いて初期磁場・銀河間磁場を観測的に制限する研究を行っていく。また今年度の研究を進める中で銀河間磁場観測における電波観測の有用性が明らかになりつつあるため、電波観測、特にファラデートモグラフィー法による宇宙磁場の観測に関する研究を新たに始める。
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次年度の研究費の使用計画 |
ファラデートモグラフィー法の解析に必要な計算機を購入し、また電波観測について共同研究を進めるためイギリス・オックスフォード大学やポーツマス大学に出張する。
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