研究課題/領域番号 |
23740179
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
高橋 慶太郎 熊本大学, 自然科学研究科, 准教授 (80547547)
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キーワード | 宇宙磁場 / 宇宙背景放射 / ガンマ線 / ファラデー回転 / 国際研究者交流 / 韓国 / オーストラリア |
研究概要 |
今年度は宇宙背景放射や高エネルギー天体を用いた原始磁場・銀河間磁場の探索に関する研究を昨年度に引き続き行い、また偏光電波観測特にファラデートモグラフィー法を用いた銀河間磁場の探索に関する研究に着手した。 宇宙背景放射を用いた研究では原始磁場に関するパラメータだけでなく一般の宇宙論パラメータも考慮して観測データをフィットし、より一般的な制限を得ることに成功した。特にBモード偏光の新たなデータを加えることで1Gpcという大きなスケールで7nGauss程度の原始磁場が存在したという示唆が得られた。これがもし今後の観測でも確かめられれば宇宙の初期になんらかのメカニズムで磁場が生成されたという初めての証拠となる。 また高エネルギー天体を用いた研究では、ブレーザー天体Mrk421の1000日にもわたる連続的なTeVガンマ線のデータを用い、昨年度のMrk501のデータを用いた解析よりも信頼度の高い制限が得られた。具体的にはMrk421が属する銀河団と銀河系が属する銀河団の間に広がるボイド空間における磁場に対して10**(-20)Gaussという下限が3σの信頼度で得られた。これは具体的なボイドに存在する磁場の存在を示したという点で世界初のことであり、原始磁場に対する貴重な情報が得られるものであった。 最後に、今年度は偏光電波観測によるファラデートモグラフィー法の研究に着手した。特に系外銀河の背後にあるクェーサーを観測し、視線方向の磁場分布・光源分布をトモグラフィーにより再構成することによって銀河間磁場を測定する可能性を探った。その結果、センチ波電波望遠鏡の将来計画であるSKAでは十分な精度で銀河間磁場を測定できることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
宇宙背景放射や高エネルギー天体の研究は計画通り進み、ファラデートモグラフィーの研究に関しては韓国やオーストラリアの研究者と協力し、2本の論文を投稿して計画以上に進展している。またオーストラリアの電波望遠鏡ASKAPのチームに参加することになり、密な情報交換と共同研究が可能になった。これは当初の計画にはなかったことで、今後ますますの進展が見込まれる。
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今後の研究の推進方策 |
宇宙背景放射の研究では最近公表されたプランク衛星のデータを用いてより詳細な解析を行う。特にBモード偏光のデータによって原始磁場の存在についての信頼性を高めることを試みる。高エネルギー天体の研究ではこれまでTeVガンマ線がカスケードしてGeVガンマ線になっていく一連のプロセスを解析的なモデルで評価していたが、これをモンテカルロシミュレーションを行うことによりより精密な評価をする。これによってボイド空間における磁場の存在をより有意なものにする。ファラデートモグラフィーに関してはオーストラリアのASKAPチームとの共同研究をより深め、銀河間磁場の観測の可能性を探る。またASKAP望遠鏡におけるデータ処理のパイプライン、特に波長の関数としてのストークスパラメータから視線に沿う方向の磁場の分布に関する情報を引き出すソフトウェアの開発を視野に入れて研究を進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし。
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