前年度に引き続き、宇宙初期に生成された原始磁場を観測するために天体活動が極度に抑制されている銀河間空間の磁場の観測を目指した。TeVガンマ線を放出する高エネルギー天体からの遅延2次ガンマ線を用いて銀河間空間に存在する微弱な磁場を検出する方法を前年度までに開発してきたが、この方法を実際に活動銀河核Mrk421の観測データに適用した。観測データとしてはTeV領域ではARGO-YBJによる長期観測データを用い、GeV領域ではFermi衛星によるデータを用いた。850日にも及ぶ長期間の観測データに対して遅延2次ガンマ線が含まれていないということを、逆正規法と呼ばれる統計的手法を用いることによって検証した。その結果、銀河間磁場への制限の統計的精度がこれまでに比べて飛躍的に向上し、Mrk421と銀河系の間に広がる広大なボイドに存在する磁場に関して10のマイナス20.5乗ガウスという下限を4σという確からしさで得ることができた。これによりボイド空間という天体活動が極度に抑制された空間においても、一定以上の磁場が存在することが確かめられた。ボイド空間の磁場の起源についてはインフレーション期による量子論的生成や相転移における非熱的プロセス、再結合以前の宇宙におけるプラズマ運動、宇宙再電離期の紫外線やX線におyる非熱的プロセスなど初期宇宙の様々なシナリオが考えられているが、今回得られた下限によって重要な示唆を与えることができた。
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