CERN研究所のLHC-ATLAS実験は、平成23年度に重心系エネルギー7TeVの陽子陽子衝突データを5 /fb(インバースフェムトバーン)、平成24年度に重心系エネルギー8TeVの陽子陽子衝突データを20 /fb収集した。 以上のデータを用いて、余剰次元粒子の探索結果を発信した。具体的には、重い余剰次元粒子が軽い余剰次元粒子とともにμ粒子に崩壊する余剰次元モデルの探索を行った。この探索の場合、μ粒子の運動量は、重い余剰次元粒子と軽い余剰次元粒子の質量差に依存する。従来の主流では20GeV以上の運動量領域を用いる中、今回の研究では、6GeVにまで低運動量領域のμ粒子を用い、余剰次元粒子の質量差の小さなモデルに対しても探索感度を向上させることに成功した。標準模型から最小限の拡張によって実現される最小余剰次元モデルに対して、質量差が小さなモデルにおいても800GeV程度の質量を持つ余剰次元粒子にまで探索の範囲を拡大させた。 前年度から継続しているμ粒子検出器に設置位置測定では、昨年度の報告に記述したように、μ粒子検出器が設計値から最大で5cm程度ずれていることを明らかにして、この位置のずれの補正をトリガー論理回路に組み入れた。平成25年度では、手法の最終的な確立につとめ、大量のシミュレーションとデータを駆使した系統的不確かさの軽減につとめた。
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