研究概要 |
昨年度に引き続き,中津了勇氏(摂南大学)と共同で, 非可換空間におけるインスタントン解のAtiyah-Drinfeld-Hitchin-Manin (ADHM)構成法について詳しく調べた.ADHM構成法とは, インスタントン解のモジュライ空間とADHMデータのモジュライ空間との1対1対応(双対性)を基にしたものであり,その双対性の証明を非可換空間上に拡張することが一つの目標である.非可換空間上のゲージ理論の記述には,スター積を用いる方法とオペレータ形式による記述がある.前者は,物理的・幾何学的意味は比較的分かりやすいが,非可換パラメータに関する収束性の取り扱いが難しい.後者は, 非可換パラメータの任意の値に対して議論を展開できるが,幾何学的解釈が難しい.今年度は可換空間での厳密な双対対応から非可換変形することでスター積を用いる記述でのADHM双対性の証明を完結させた.非可換パラメータに関する収束性は仮定しているが,モジュライ・パラメータはすべて含んだ解空間を取り扱っている. また,菅野浩明氏,村中大地氏(名古屋大学大学院多元数理科学研究科)と共同で,2重周期モノポールのモジュライ空間の計量を研究し,Gibbon-Mantonのアイデアを適用することで,ある漸近領域でのハイパー・ケーラー計量(ALH型)を具体的に構成した. 平成23年度から取り組んできたソリトン理論・可積分系の非可換空間への拡張については,昨年度末にささやかな進展があったこともあり,研究会で現状報告を行った.特に反自己双対ヤン・ミルズ方程式については, 招待論文の好機を利用して総合報告の形でまとめた. 上記の成果を国内外の各大学のセミナーや研究会で発表し, 幅広い分野の専門家と質疑応答を行った.
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