研究概要 |
世界初のニュートリノ振動現象の直接観測を目標に長基線ニュートリノ振動実験OPERAを行っている。本研究課題の目的は、OPERA実験におけるτ→ハドロン崩壊のバックグラウンド(BG)推定に使用しているシミュレーションの実験的検証、及び新たに提案した反応起因の核破砕片探索によるBG低減率の導出、である。2011年度はCERNで2,4,10GeV/c ハドロンビームをOPERAと同型の原子核乾板検出器に照射した実験の解析グループを立ち上げ、データ解析を推し進めた。OPERA本実験のτ粒子崩壊探索長の約9倍にあたる3600事象のπ粒子を解析し、300事象のハドロン反応を検出した。今後、反応点から生成した2次粒子の詳細解析を進め、シミュレーションとの比較を行う。一方で新たな試みであるハドロン反応起因の核破砕片探索を行った。核破砕片はハドロン反応のよいプローブとなり、BG推定値を低減できる。核破砕片は0次近似として等方的に放出されるため、大角度飛跡を検出する新たな技術が必要となる。そこで従来の約10倍に渡る大角度(|tanθ|=3.0)まで飛跡認識ができる新型の広視野原子核乾板自動飛跡読み取り装置を開発した。新装置では大量の飛跡認識処理を高速に行うためにGPU(Graphics Processing Unit)を搭載し、超並列画像処理ユニットとして活用した。この研究開発を通して飛跡認識処理を全面的にGPUで行う新しい形の原子核乾板自動飛跡読み取り装置の実用化に初めて成功し、効率的にシステマティックな大角度飛跡解析が可能となった。解析の結果、2,4,10GeV/cでの核破砕片付随率が16,45,65%となる入射エネルギー依存性や、前方放出の方が後方放出よりも生成率が高くなる異方性が見えてきており、大変興味深いデータが得られている。これらはさらに精査して2012年度に最終結果をまとめる。
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