研究概要 |
世界初のニュートリノ振動現象の直接観測を目標に長基線ニュートリノ振動実験OPERAを行っている。本研究課題の目的は、OPERA実験におけるτ→ハドロン崩壊のバックグラウンド(BG)推定に使用しているシミュレーションの実験的検証、及び新たに提案した反応起因の核破砕片探索によるBG低減率の導出、である。 本研究ではCERNで2,4,10GeV/c ハドロンビームをOPERAと同型の原子核乾板検出器に照射した実験のデータ解析を進めた。3600事象のπ粒子を解析し、300事象のハドロン反応を検出、反応点から生成した2次粒子の幾何学的・運動学的振る舞いを分析した。これはOPERA本実験のτ粒子崩壊探索長の約9倍にあたる。その後、各入射エネルギー毎にシミュレーションとの比較検討を行った結果、30%の精度で測定値とよく一致することを実験的に初めて明らかにした。 一方で新たな試みであるハドロン反応起因の核破砕片探索を行った。核破砕片はハドロン反応のよいプローブとなり、BGを低減できる。しかし、核破砕片はほぼ等方的に放出されるため、大角度飛跡を検出する新たな技術が必要となる。そこで立体角にして従来の約5倍に渡る大角度(|tanθ|=3.5)まで飛跡認識ができる新型の原子核乾板自動飛跡読み取り装置を開発した。新装置では大量の飛跡認識処理を高速に行うためにGPU(Graphics Processing Unit)を搭載し、超並列画像処理を実現した。この研究開発を通して飛跡認識処理を全面的にGPUで行う次世代型の自動飛跡読み取り装置を初めて実用化し、効率的かつ系統的な大角度飛跡解析が可能となった。新装置を用いた解析の結果、大角度に渡る核破砕片探索によりハドロンBGの40%が低減できることが分かった。また、OPERA実験で検出したντ反応候補事象に適用し、実際に核破砕片が付随していないことを実証した。
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