研究課題/領域番号 |
23740185
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
森島 邦博 名古屋大学, 現象解析研究センター, 研究員 (30377915)
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キーワード | 原子核乾板 / 中性子 / 素粒子 / 自動解析 |
研究概要 |
本研究は、原子核乾板による高速中性子検出技術の開発である。本技術は、検出器本体である原子核乾板の開発とその読み取り技術からなる。検出器の開発は、OPERAフィルムを基に名古屋大学乳剤製造装置により新たに開発・合成した原子核乳剤の開発により行った。14MeV中性子の測定は、14MeV核融合中性子ビームラインにおいてOPERAフィルムに照射を行い、S-UTSにより読み取り評価を行った。MeV領域の中性子については、OPERAフィルムは膨大なバックグラウンドが蓄積されているために数MeVの環境ガンマ線による反跳電子飛跡との識別が困難であった。これに対処するために、現像手法の開発、及び新たに製造した乳剤の感度の調整を行った。中性子は2.4MeV核融合中性子ビームラインによる単色中性子を用いる予定であったが、故障により使用出来ず、カリフォルニウム照射により行った。更に、より短い飛跡数ミクロンの飛跡読み取りのために、S-UTSの読み取りアルゴリズムの改良を行い、5ミクロン程度の飛跡の自動読み取りに成功した。本来行う予定であった2.4MeV中性子ビームの照射による検出器の検出効率・応答特性評価はビームラインの復旧次第行う予定である。これらの開発により、原子核乾板により高速中性子検出の実用化を達成した。本研究は、素粒子実験のみならず、核融合中性子計測、医療用などの加速器からの中性子線量評価、宇宙等の様々な環境における中性子測定に原子核乾板を用いる事を可能とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
14MeV中性子からカリフォルニウム線源による数MeV中性子による数ミクロンの飛跡の検出を達成し、おおむね順調に進展しているが、当初の予定で行う事が出来なかったものとしては、2.4MeV中性子による検出器の検出効率の導出と応答特性の評価である。これについては、ビームラインが復旧次第、次年度行う事とし、これと14MeV中性子の結果を総合的に評価する事で、高速中性子検出のエネルギー依存性を評価を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の課題としては、高速中性子検出に最適な原子核乾板構造や組成の最適化、現像手法の開発、及びそれに最適な読み取りアルゴリズムの開発を行う事でより短い飛跡に対して高い検出効率の向上を目指す。また、飛跡の角度と飛程情報の高精度化を目指す。更に、原子核乾板を地上、地下、高空などで照射を行い、それらの環境における中性子の測定、及びその他宇宙線種識別技術の開発を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
ビームラインの故障のために達成出来なかった2.4MeV中性子ビームの検出器への照射により、検出効率の測定、及び検出器の応答特性の理解を行う。これらの結果を基に、最新の処方による原子核乾板を作成し、その検出器を用いた地上、高山、地下などの環境中性子の測定を行う予定である。
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