• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実施状況報告書

ニュートリノ力学を礎とする新しい物理の探究とその検証

研究課題

研究課題/領域番号 23740187
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

吉岡 興一  慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (80363323)

キーワード素粒子論 / ニュートリノ
研究概要

1.対称性の破れに焦点をあて、前年度に引き続き、超対称性の破れについて研究を行った。ゲージ伝達による機構では、F 項による破れは一般にゲージーノに質量を与えられないことが知られており、我々は D 項を用いる超対称性の破れを考察した。とくに、F 項のみのポテンシャルが有限の場の配位に真空をもたず、D 項により初めて安定な真空が現れる場合に着目した。この場合の利点は、ゲージーノ質量の問題を引き起こす F 項ポテンシャルの真空縮退が現れず、かつ、古典レベルで R 対称性の破れが起きる可能性があることである。我々はそのような模型を系統的に調べ、最も簡潔な形を提唱した。またポテンシャル解析や伝達部分の構成により、実際にゲージーノ質量が輻射補正により生成されることを示した。
2.右手型ニュートリノに質量を与えるスカラー場が暗黒物質である可能性をさらに追究した。ニュートリノ質量がディラック型の場合は、古典レベルでの崩壊が主要となるが、マヨラナ型の場合は、1ループの量子補正を通じた暗黒物質の多様な崩壊モードを評価する必要がある。また、右手型ニュートリノの質量の大きさによって、主崩壊モードも変わりうる。標準模型のさまざまな粒子への崩壊率を評価し、次年度へつながる解析をおこなった。
3. 標準模型の3世代を拡張し、ベクトル的な2世代を加えた模型を考察した。とくに今年度に発見されたヒッグス粒子の質量や、標準模型の予言から有意なずれが見出されているミューオンの異常磁気能率について詳細な評価をおこなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ニュートリノ力学にともなう新しい物理描像を多角的に考察する試みとして、対称性の破れや、スカラー暗黒物質のさまざまな性質、多世代模型におけるヒッグス質量とミューオンの磁気能率などについて研究を進めた。基礎理論におけるニュートリノの本質的役割の理解へ向け、おおむね順調に進展していると言える。

今後の研究の推進方策

引き続き、対称性によるニュートリノ力学の考察や、それに伴い必要となるさまざまな場の理論的研究をおこなってゆく。まず右手型ニュートリノの力学に関して系統的な取扱い法の研究を進める。さらに、前年度までに得られた暗黒物質崩壊の解析を発展させ、とくに フレーバーと CP の結びつきより ニュートリノ物理の検証をおこなってゆく。自然界にはさまざまな階層性が存在しており、例えば時空構造による統一はその重要な解決を与えうる。新しい力学を示唆するニュートリノ物理と階層性問題は、統一理論を目指すアプローチの中で密接に関連していると想定され、その可能性を追究し、前年度までの結果と合わせて発表する。

次年度の研究費の使用計画

設備備品 (専用計算機) の費用として、今年度までは少額のみ使用した。次年度に、より高度な機器の費用として用いる予定である。また、研究目標の達成の為には幅広い視点で現象論的課題を遂行してゆく必要があり、専門図書の購入、分野外研究者の招聘、さまざまなテーマの研究会への参加等をおこなう。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] Runaway, D term and R-symmetry Breaking

    • 著者名/発表者名
      T.Azeyanagi, T.Kobayashi, A.Ogasahara, K.Yoshioka
    • 雑誌名

      Physical Review D

      巻: 86 ページ: 95026

    • DOI

      10.1103/PhysRevD.86.095026.

    • 査読あり
  • [学会発表] Runaway, D term and R-symmetry Breaking2013

    • 著者名/発表者名
      小笠原敦、畔柳竜生、小林達夫、吉岡興一
    • 学会等名
      GCOEシンポジウム 創発性豊かな分野の開拓
    • 発表場所
      京都大学
    • 年月日
      20130212-20130213
  • [学会発表] Runaway, D term and R-symmetry Breaking2012

    • 著者名/発表者名
      T.Azeyanagi, T.Kobayashi, A.Ogasahara, K.Yoshioka
    • 学会等名
      18th International Summer Institute on Phenomenology of Elementary Particles and Cosmology
    • 発表場所
      Sun Moon Lake, Taiwan
    • 年月日
      20120819-20
  • [学会発表] Runaway and D term in gauge-mediated supersymmetry breaking

    • 著者名/発表者名
      小笠原敦、畔柳竜生、小林達夫、吉岡興一
    • 学会等名
      YITP workshop "Progress in Particle Physics 2012"
    • 発表場所
      京都大学基礎物理学研究所
  • [学会発表] Runaway and D term in gauge-mediated supersymmetry breaking

    • 著者名/発表者名
      小笠原敦、畔柳竜生、小林達夫、吉岡興一
    • 学会等名
      YITP workshop "Field Theory and String Theory"
    • 発表場所
      京都大学基礎物理学研究所

URL: 

公開日: 2014-07-24  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi