量子重力の理解は、我々の世界に対する認識、特に空間や時間の概念を根本的に異なったものに変える、非常に興味深い問題である。特に、ゲージ/重力対応と呼ばれる、量子重力と重力を含まない場の理論が互いに等価であるとする予想が重要となる。私は、現在大阪大学所属の飯塚氏と共に、ゲージ/重力対応を使ったbrick wallの解析を行った。このbrick wallは、ブラックホールの地平面付近で理論の自由度が無限に大きくなるように見える現象に関するものである。我々は、ゲージ/重力対応の枠内では、非常に時間がたったブラックホールでは、実際に重力の結合定数に関する摂動論では無限の自由度のようがあるように振る舞うこと、そして非摂動的には時空が地平面付近で存在しなくなることにより自由度が有限となることを示した。これは、ブラックホールの情報喪失問題に関連しても非常に重要である。 さらに、超対称場の理論の局所化といわれる厳密な相関関数を計算する手法を用いて、4次元N=1超対称ゲージ理論の閉じ込め相の解析を行った。また、同様の手法で、超弦理論の世界面理論を解析して、Dブレーン電荷の厳密な標識を求めた。
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