LHCにおいて発見されたヒッグス粒子の質量126GeVは、ヒッグス場のポテンシャルが非常に大きな場の値において平らになっていることを示唆している。また、この場の値のスケールは、超弦理論における典型的な弦スケールである10の17乗GeVとなっており、たとえば弦理論の効果により、その先でポテンシャルがずっと平らになり続ける、という変更の可能性を示唆している。このとき、ヒッグス場そのものが、インフレーションを引き起こす種、インフラトンとなることができる。 このようなシナリオにおいてヒッグス場がインフレーションの元となり、さらに実際に観測されている宇宙背景輻射の密度ゆらぎを再現可能であるための条件から、トップ・クォークの質量、および、標準模型が変更をうけるスケールΛにどのような制限がつくかを求めた。特に、Λが典型的な弦スケール10の17乗GeV程度まで大きくなれるためには、トップクォークの質量が171GeV程度でなければならないことを得られた。 従来考えられてきたようなヒッグス・インフレーションのシナリオにおいては、ヒッグス場と重力との非常に大きな結合によりヒッグス・ポテンシャルが平らになりインフレーションが実現する。しかし、このようなシナリオにおいては、BICEP2実験が報告した宇宙背景重力子輻射の間接的な証拠を説明することができない。上記の我々のシナリオに基づいて、ヒッグス場と重力との結合があまり大きくない場合に、標準模型のヒッグス・ポテンシャルが平らになるところを用いて、BICEP2と矛盾しないインフレーションが可能であることを示した。
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