研究課題/領域番号 |
23740193
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
高橋 弘充 広島大学, 宇宙科学センター, 特任助教 (10536775)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 宇宙物理 / 偏光観測 / シンチレータ結晶 / 宇宙線 / 中性子 / 地球大気 |
研究概要 |
本研究では、我々が日米欧共同で開発・製作したPoGOLite検出器をもちいて「はくちょう座X-1」を観測し、ブラックホール連星系からX線偏光を検出することを目指している。測定される偏光度は、ブラックホール周辺の降着円盤で反射された放射成分の強度に比例すると予想され、従来のエネルギースペクトルや時間変動から得られる情報とは相補的に、ブラックホール近傍のジオメトリを明らかにすることができる。 今年度は、2011年7月7日にスウェーデン・キルナにあるEsrange実験場からPoGOLite気球実験の初放球を実施することができた。ただし、気球からヘリウムが漏れるという不測の事態により、予定した高度38 kmには到達することができず5時間のフライトで気球を地上に戻したため、科学的な天体観測データを取得することはできなかった。今回フライト前後の2か月間スウェーデンに滞在することによって得られた成果は、(1)放球前の事前準備を順調に行うことができた、(2)予想到達高度に近い上空35 kmでも、我々の検出器を正常に動作させることができ気球の運用が行えた、(3)上空でのバックグラウンドデータを実測することができた、(4)気球を無事に地上に戻すことに成功し、次年度のフライトにも再利用することができる、の4点である。 2012年夏には次回のPoGOLiteフライトを行うことが決定しているため、今回培った経験を活かし効率の良いスケジュールで観測を行い、より良い精度でブラックホール連星系からのX線偏光を検出したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度のうちにPoGOLite気球実験の初放球を行い、検出器の運用とデータ取得を正常に行うことができたので、我々ができる範囲内のスケジュールは順調に進んでいる。ただし、今年度はEsrange実験場が用意した気球の不具合によって天体観測を行えなかった。この点は来年度の放球で成功裏に実施し、全体のスケジュールも当初の予定通りに進めたい。
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今後の研究の推進方策 |
来年度もスウェーデンからPoGOLite検出器を放球する。今回は北極圏を周回する2週間の長期フライトによって、いよいよ実際の天体観測データを取得できると考えている。このデータを解析することによって、ブラックホール連星系「はくちょう座X-1」からの硬X線帯域での偏光を検出し、ブラックホール周辺のジオメトリについて新たな物理情報を得たい。
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次年度の研究費の使用計画 |
来年度のフライト前後でのスウェーデンでの滞在費と、さらに先のフライトを見据えた検出器のデータ読み出し系の改良に使う。
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