本研究では、我々が日米欧共同で開発・製作したPoGOLite検出器をもちいて「はくちょう座X-1」を観測し、ブラックホール連星系からX線偏光を検出することを目指した。2013年度は、PoGOLite気球の放球に成功し、フライト中に「はくちょう座X-1」だけでなく他のブラックホール連星系GRS1915+105やパルサー星雲である「かに星雲」の観測を実施することができた。詳細なデータ解析については現在進行中である。 PoGOLite気球の放球のため、今年度も2013年6~7月にスウェーデン・キルナにあるEsrange実験場に滞在した。6月中に担当している検出器の動作検証を予定通りに終えることができ、その後は放球に適した天候を待ち、7月12日に無事にPoGOLiteを放球することに成功した。気球は高度40kmまで達し、7月26日にロシア・ノリリスク近郊に着陸するまでの2週間にわたってフライトすることができた。これにより、100万立法メートルの大気球で世界初の北極圏を周回するフライトを達成できた。 PoGOLiteに先立って、2013年3月に放球したPoGOLino検出器による大気中性子の観測データを解析した。大気中性子は、X線偏光を検出する上で主要なバックグランド源となる。これにより、地上から上空30kmまでにわたってスウェーデン上空における大気中性子のフラックスを実測し、エネルギースペクトルを推定することができた。この結果は、PoGOLiteのバックグランドを見積もる際に利用できる。
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