研究課題/領域番号 |
23740195
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
高橋 智 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60432960)
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キーワード | 宇宙密度揺らぎ / 非ガウス性 / 初期宇宙 / 等曲率揺らぎ |
研究概要 |
平成24年度も引き続き、初期宇宙進化を密度揺らぎを用いて探る研究を行った。特に、複数のスカラー場が密度揺らぎを獲得するような模型について、揺らぎの非ガウス性、重力波などに焦点を当てて、研究を行った。 まず、等曲率揺らぎの非ガウス性について、WMAP衛星のデータから制限を求めた。等曲率揺らぎはアクシオン模型やカーバトン模型などで生成される可能性があり、その非ガウス性を調べる事により、初期宇宙のシナリオに制限を与えることができる。我々は、等曲率揺らぎが断熱揺らぎと相関を持つ場合、持たない場合の両方について、その非ガウス性に対する制限を調べた。その結果、WMAP衛星のデータにより、それらの揺らぎがガウス的である場合と矛盾しない、という制限を得た。この制限は、初期宇宙の様々なシナリオに対する制限として有用である。 また、原始重力波の観測から、初期宇宙の熱史を探る研究も行った。宇宙初期に振動するスカラー場が宇宙を支配する時期が存在すると、重力波のスペクトルに特徴的な痕跡を残す。我々は、将来のDECIGOなどの重力波実験と、将来のCMBの観測を合わせた場合に、インフラトン場、およびインフラトン場以外の(宇宙を一時的に支配する)スカラー場の再加熱温度に対して、どの程度の制限が得られるかについて詳細に調べた。そして、初期宇宙の熱史を調べる際、重力波実験とCMBの観測は互いに相補的であることを、具体的な解析を行うことにより示した。 さらには、宇宙密度揺らぎに生成メカニズムについて、新たな模型を提案した。この模型は、従来議論されてきたカーバトン模型、modulated reheating 模型のシンプルな拡張になっており、さらには、この研究で議論した定式化は、これらの模型を含む一般的なモデルに有用である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度においては、初期宇宙の密度揺らぎに関して様々な角度から研究を行うことが出来、またそれらの成果を論文として発表する事ができた。初期揺らぎの非ガウス性、原始重力波、等曲率揺らぎなど、揺らぎの様々な側面から研究を行い、どれぞれの側面が宇宙初期のシナリオを考える際に、どのように有用であるかについて明らかにすることが出来た。また、新しい初期密度揺らぎの生成メカニズムの提案する研究においては、新しい模型の提案のみならず、これまで知られている模型を包括的に含むような定式化についても構築した。これらの理由から、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2013年3月には宇宙背景放射の精密観測を行ったプランク衛星からのデータが発表された。このデータにより、初期宇宙密度揺らぎの性質が詳細に分かってきた。2014年には、プランク衛星から宇宙背景放射の偏極のデータも発表される予定である。来年度は、まず2013年3月に発表されたプランク衛星のデータと矛盾しない初期密度揺らぎの生成メカニズムについて、今後の観測等でどのようにそれらの模型を峻別していくか、研究を行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度も引き続き、研究成果を積極的に国際会議等で発表して行きたいと考えている。また、共同研究についても様々な研究機関の研究者と行う予定であるので、研究費のほとんどは旅費で使用する予定である。
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