今年度は、2014年に発表されたBICEP2による原始重力波の観測結果を受けて、原始重力波の振幅が大きい場合にどのような原始密度揺らぎの模型、および初期宇宙進化史が考えられるか、そしてどのようなモデルが排除されうるかに関する研究を主に行った。 その中の研究のひとつとして、断熱揺らぎと相関をもった等曲率揺らぎに関するものがある。BICEP2から公表された原始重力波の振幅の大きさと、プランク衛星による観測を両方矛盾なく説明することは、標準的に考えられている模型のフレームワークでは困難であると考えられた。本研究では、断熱揺らぎと相関を持つ等曲率揺らぎ揺らぎを考えると、この困難を回避し得ることを、実際のBICEP2、およびプランク衛星の観測データを用いて具体的に解析を行うことにより議論した。また、BICEP2の示唆した原始重力波の振幅を仮定した場合、重力波のスケール依存性(特に、いわゆる「ブルー」なスケール依存性を持っている場合)に対して、現在の観測からどのような制限が得られるかについて詳細な研究を行った。さらには、将来の宇宙空間における重力波干渉実験(DECIGOなど)において、重力波の振幅のみならず、重力波スペクトルのスケール依存性がどの程度の精度で決定できるかに関しても詳細に調べた。スケール依存性に関しては、これまでに議論されていた。いわゆる通常のパワースペクトルのスペクトル指数のみでなく、さらにこのスペクトル指数のスケール依存性までも考慮して解析を行った。また、宇宙の再加熱温度に関しても、DECIGOなどの重力波干渉計を用いた際に、どのような場合に精度良く決定できるか等、詳細な解析を行った。 研究期間全体の研究を通して、様々なモデルにおいて生成される密度揺らぎの性質(パワースペクトル、非ガウス性等)に関する理解が深まり、初期宇宙進化史の解明へ向けて有用な結果が得られた。
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