研究課題/領域番号 |
23740197
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
松浦 壮 慶應義塾大学, 商学部, 講師 (70392123)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 超対称性 / 数値計算 / 格子ゲージ理論 / 行列模型 |
研究概要 |
平成23年度は、「研究実施計画」に則り、将来的に4次元N=4超対称ヤン・ミルズ理論を数値計算を実行するために最適なアルゴリズムを検討した。我々が採用した手法は、4次元時空を、2次元格子と2次元ファジー球面の直積として実現するというものである。より具体的には、最初に2次元格子の連続極限を取り、その後でファジー球面を通常の球面に近づけていくのだが、この際、連続2次元時空上のファジー球面背景の理論が正しく4次元ゲージ理論になっているか、という問題がある。我々の理論の場合、背景をファジー球面にする事による超対称性の壊れ方は、あくまで低エネルギー側由来のものである。従って、そのような変形によって紫外発散の構造が変わる事はあり得ないため、通常の場の理論による考察から問題ないと予想される。我々は、この予想を摂動計算によって具体的に確かめ、4次元時空が正しく実現されるという傍証を得た。続いて我々は、2次元理論の数値計算を行った。上でも述べた通り、4次元理論の数値計算を行うためには、まず、2次元格子理論の数値計算が実行できなければならない。本年度は、ファジー球面解を実現するような変形をする前の、2次元N=(8,8)超対称ヤン・ミルズ理論を計算機上でシミュレーションすることを目指した。研究計画にも述べた通り、格子計算に使うアルゴリズムとしては杉野理論、CKKU理論、半格子法があり得るが、作用関数の単純さを考慮してCKKU理論を選択した。この理論の場合、格子間隔を安定化させるための質量項を加えなければならず、連続極限での結果を正しく得られるかどうかの検証が必要になる。我々は、その判断材料として、超対称性によって結果の分かっているボゾン作用の値を計算し、然るべく取った連続極限で、その値が理論値に近づいて行く事を確かめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に記した通り、平成23年度の目標は、4次元N=4超対称ヤン・ミルズ理論を正則化する方法の中で最も数値計算に適したものを選び出し、Rational Hybrid Monte Carlo 法を用いて実際にプログラムを作成することにある。それに対して、【研究実績の概要】で記したように、我々は既にプログラムを作成し、2次元理論の段階ではあるものの、数学的に厳密な結果が分かっているような物理量の計算が出来るまでになっている。極めて順調な進捗といえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に作成したプログラムは正しく機能しているが、部分的に無駄な計算をしている事が分かっている。そこでまず、プログラム自体の高速化を図るべきである。専門家の意見も取り入れながらプログラムを高速化し、それを元にして、2次元N=(8,8)超対称ヤン・ミルズ理論の数値シミュレーションを高い精度で完成させることが最初の目標になる。その上で、4次元理論を実現するための変形を施し、いよいよ4次元N=4超対称ヤン・ミルズ理論の数値シミュレーションに取りかかる。4次元理論の場合も、まずは数学的に値の分かっている物理量を計算する事でプログラムに潜むバグを取り除き、その上でこれまで計算できなかったような物理量の測定を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、国内での研究会・学会に参加する費用として、昨年度と同程度の25万円程度、そして、海外での研究会やワークショップに参加する費用として、最低限、往復の航空運賃の15万円程度が必要になる。また、本年度は数値的な処理や成果発表を行う機会が増えると予想されるため、数値計算ソフトとプレゼンテーションソフトとして23万円程度が必要である。さらに、議論のために専門家を招聘するための謝金として2万円程度、専門図書の購入費として5万円程度を見込んでいる。
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