研究実績の概要 |
我々は、4次元時空を格子とファジー球面の直積として実現する手法を実現するために、構造が比較的容易なCKKU理論を詳細に調べた。 我々はまず、この方法で4次元時空が実現されることを理論的に確かめるために、非可換球面が実現されるように変形されて理論に対して摂動計算を行い、4次元時空の生成を阻むような発散が出ないことを確かめた。その上で、変形を施す前の 2次元N=(8,8)超対称ヤン・ミルズ理論をCKKU法を用いて格子上に定義し、実際に数値計算を行った。 この理論では、スカラー場の平坦方向をコントロールする必要がある。さらにCKKU理論はU(1)モードを含んでおり、格子間隔を固定するために大きな質量項が必要である。同時に、この理論はフェルミオンにゼロモードを含んでいるため、数値計算を行うためにはこれも正則化する必要がある。我々は、これらの項をコントロールしながらシミュレーションを行い、超対称性から予言される物理量を数値計算からも正確に再現した。また、連続極限においてU(1)モードが分離されている事も確めた。 このように、 CKKU理論は制御変数の数が多く、目標の結果を得るための作業が煩雑である。そこで、当初の研究計画通り、より制御変数の数が少ない杉野理論の考察を行った。杉野理論ではゲージ群をSU(N)に選べるため、 CKKU理論特有の、U(1)モードに付随する問題は生じない。その一方、素朴に構成した杉野理論では、物理的でない多数の真空が縮退している。これを回避するために、リンク変数に「許容条件」と呼ばれる制限を設ける処方箋が提案されたが、この条件はプログラムを非常に煩雑にするため、数値計算の足かせになっていた。 そこで我々は、許容条件を課すこと無く、真空の縮退を取り除く方法を開発した。これによって杉野理論の最大の障害が取り除かれ、2次元超対称ゲージ理論の数値計算を行うために最適な格子理論を、実質的に杉野理論に一本化することが出来た。
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