研究課題/領域番号 |
23740198
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
新田 宗土 慶應義塾大学, 商学部, 准教授 (60433736)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 超対称ゲージ理論 / 非アーベリアン渦 / カラー超伝導 / 非アーベリアン・モノポール / インスタントン / マヨラナ・フェルミオン / ディラック・フェルミオン / 非可換統計 |
研究概要 |
強い相互作用の閉じ込めの問題は物理学において、長年の懸案の課題である。クォークがカラー電束によって閉じ込められる機構の双対な模型として、モノポールが磁束つまりボーテックスによって閉じ込められるという南部のアイデアが昔からあった。ここ数年で、超対称ゲージ理論では、それがある程度正当化できることがわかってきた。これまで、ゲージ群がU(N)の超対称ゲージ理論において、モノポールがU(N)の非アーベリアン渦で閉じ込められることは知られていた。(1)今回は、ゲージ群がSO, USp群の場合に,モノポールが非アーベリアン渦に閉じ込められる解を構成した。 (2)オービフォルドC/Z_nという特異点のある空間の上で、U(N)の非アーベリアン渦の構成とを議論した。渦度がn以下のものは、特異点に捕らわれたフラクショナル渦となっており、丁度nになると特異点から外れて外に出れることなどがわかった。また、散乱のダイナミクスも議論した。(3)非アーベリアン渦のモジュライ空間の計量は、渦が十分に離れている場合に以前求めた。これを用いて、モジュライ近似を用いて非アーベリアン渦の低エネルギー散乱を詳しく調べた。(4)インスタントンを構成要素であるメロンに分解する新しい方法を提案した。CP1模型においてアイソメトリーをゲージ化することで,シグマモデルインスタントンが半整数量子渦に分解できることを示した。 次に、QCDは高密度の極限で、クォークがペアを組んで凝縮し、カラー超伝導状態になるということがわかっている。ここでは、カラー超伝導であると同時に、超流動にもなっている。そこでは、回転への応答として、非アーベリアン渦が存在する。クォークの自由度から記述するには、BdG方程式を解かないといけない。インデックス定理をBdG方程式に適用し、非アーベリアン渦に局在するフェルミオンゼロモードの数を数えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
以前、高密度QCDにおいて、非アーベリアン渦にマヨラナ・フェルミオンが3つ局在していることを発見し、さらに渦を交換した際の非可換統計を構成した。計画では、これを拡張することであった。(1)マヨラナ・フェルミオンが奇数個の場合に拡張することができ、プレプリントで発表している。計画ではここまででよかったが、さらに、(2)マヨラナ・フェルミオンではなくディラック・フェルミオンが局在している場合も非自明な非可換統計があることがわかって、論文にすることができた。(3)高密度QCDのカラー超伝導のある種の非アーベリアン渦には、ディラック・フェルミオンが複数局在していることがわかり、この非可換統計も構成した。また、超対称ゲージ理論では、ゲージ群がU(N)の場合は、N-1個のディラック・フェルミオンが局在しているので、この場合にも適用できることがわかった。 また、実績概要で述べたように、予定していなかった進展もたくさんあった。(4)インスタントンを構成要素であるメロンに分解する新しい方法、(5)オービフォルド上の非アーベリアン渦の構成、(6)非アーベリアン渦の低エネルギー散乱などがそれである。 このように、当初の計画と比べて大幅に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
・複数のマヨラナ(あるいはディラック)フェルミオンが局在した渦の非可換統計の研究の続きとして、実際の物性系での実現の提案、量子コンピューターへの応用などを行いたい。・また、カラー超伝導においては、渦間の遠距離相互作用を以前に調べたので、非アーベリアン・ボーテックスの格子構造を解析する。よく知られているように、通常のタイプIIの超伝導体では渦糸に斥力が働くので、渦糸格子が形成される。これが、超伝導体の安定性を保証している。同様に、カラー超伝導体でも渦糸格子が形成されているはずで、その安定性の議論をしたい。また、近距離の相互作用についてはまだ何もわかっていないので、これについても調べたい。これがわかると、渦格子の相図がかける。つまり、QCD相図の理解が最近のQCDの重要な課題であるが、これに回転の軸を入れた者はいないので、我々はそれを行いたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
国内および国際会議に多く出席して、これまでの研究経過を発表するために、旅費に多く使う予定である。また、新たな共同研究も行うために、海外の様々な大学・研究所を訪問し、また海外の研究者を招へいする。このためにも、旅費や研究打ち合わせや日当に多くさくことになる。また、資料整理などにも使う予定である。新しい、計算機の購入も予定している。
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