研究課題/領域番号 |
23740206
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
粕谷 伸太 神奈川大学, 理学部, 准教授 (00386806)
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キーワード | 宇宙のバリオン数 / 暗黒物質 / 密度揺らぎ |
研究概要 |
本研究は、素粒子の標準模型を超えた物理(特に超対称性理論)におけるスカラー場が、宇宙の物質・反物質非対称や暗黒物質の生成、および、宇宙の大規模構造の種となる密度揺らぎの形成に対して、どのように役立ち、影響するかを解明することを目指している。超対称性理論に注目するのは、LHCによって発見・解明の可能性が最もありそうだからである。具体的には、アフレック・ダイン場によるバリオン数と暗黒物質Qボールの生成において、バリオン、および、暗黒物質の等曲率揺らぎの観測的制限の検証、スカラー場のポテンシャルの形とQボールの性質の関係の解明、Qボール形成に伴う重力波の観測可能性の検討、などを行う。また、超対称性アクシオン模型において、等曲率揺らぎスペクトルへの制限の検証、暗黒物質としてのアクシオンとその超対称性パートナーの可能性の追求、などを行う。 本年度の成果として、前年度までに研究していたQボールに崩壊によって宇宙のバリオン数と暗黒物質を同時に説明するシナリオの改良が挙げられる。超対称性の破れがゲージ場媒介のモデルにおいて、QボールのチャージQ(バリオン数)が十分小さい場合には、核子へ崩壊する。その際、グラビティーノやアクシーノへの崩壊し暗黒物質を説明できる。同時にニュートラリーノのように重く、その崩壊によって元素合成で作られた元素を破壊しかねない粒子も生成され得る。Qボールの崩壊モードに関して発展があり、シナリオ全体の再構築が成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Qボールの崩壊で暗黒物質とバリオン数を説明するシナリオに関して、論文執筆、および、投稿査読中に崩壊モードに関する新たな知見が得られ、この研究は完成途上にある。また、研究計画にあった、ポテンシャルの形が場の大きさで変わるとき、Qボールがどのように変形していくのかを、数値的に解明するトピックに関して、ゲージ場媒介による超対称性の破れのモデルで考え、その形成されたQボールの性質の変化を解明することを目指し、大規模な格子計算を行っているが、最終的な結果には至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
アフレック・ダイン機構は超対称性理論上で構築されているが、素粒子物理学の知見から得られる様々な枠組みの中で機構がうまく働くか良く分かっていない。一例として、レプトンのフレーバーを説明するような離散的な対称性の枠組みでどのように働くかを精査するつもりである。また、引き続き、ポテンシャルの形が場の大きさで変わるとき、Qボールがどのように変形していくのかを、大規模な格子計算によって解明していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度からの研究成果の発表として、国内外で行われる学会や国際会議で発表する予定である。なお、実施状況報告書(収支状況報告書)の次年度使用額にある金額は、本年度、在外研究期間があり、当初見込んでいた旅費の金額が大幅に変化したことと、物品購入計画を変更せざるを得なかったためであり、次年度の当初予算と合わせて、旅費、及び、物品費の一部として使用する予定である。
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