研究課題/領域番号 |
23740207
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研究機関 | 山梨英和大学 |
研究代表者 |
高橋 弘毅 山梨英和大学, 人間文化学部, 講師 (40419693)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 宇宙物理 / 計算物理 / 相対論 / 重力波 |
研究概要 |
平成23年度は、基本的なプログラムやライブラリーのソフトウェアの整備を行った。Hilbert-Huang変換(HHT)を用いた解析をする際に、NASA グループが作成した計算コードを元としたプログラムを用いていたが、メモリー配置、計算の効率性などの観点から多くの問題点があることがわかっていた。より効率よく計算を実行していくために、プログラムの全面的な改良を行った。この部分はもっとも基本となる部分であるため、年度の前半までに完成させた。HHT解析では、まず、一種の high-pass filter を繰り返して適用する Empirical Mode Decomposition (EMD) を行う。これにより時系列データからノイズを除去するとともに、データを複数の周波数帯域モード (IMF: Intrinsic Mode Functions) に分解する。さらに、それぞれの IMF に対して Hilbert 変換を用いた Hilbert Spectral Analysis (HSA) を行い、瞬時振幅や瞬時周波数の時間的変動を解析する。EMD はその名の通り経験則的な手法であり、NASA グループや研究代表者らのこれまでの研究で、重力波データ解析においては、EMD の計算に必要ないくつかのパラメータの設定方法の重要性が明らかになってきたが、最適なパラメータは、信号やノイズの性質に依存する面もあり、我々が取り扱う重力波検出器データに対する系統的なサーチを行い、現在、その結果を投稿論文としてまとめているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Hilbert-Huang変換(HHT)を用いた解析をする際の基本的なプログラムやライブラリーなどのソフトウェアの整備は、当初の予定通り進んでいる。EMD の計算に必要な最適なパラメータについても、重力波検出器のデータを想定し、系統的なサーチを行い、現在、その結果をまとめているところであり、順調に成果を出しつつある。一方、HHTを用いた解析をする際の基本的なハードウェアについては、東日本大震災の影響で、本研究費の配分が遅れたために若干遅れているが、平成24年度の中盤を目処に導入を予定しており、研究遂行にはほとんど影響はない。また、夏季の休暇中に国外の研究協力者と研究打ち合わせを行うことも予定していたが、同様の理由で見合わせた。しかし、それに代わって、電子メールやテレビ会議を利用した打ち合わせの回数を増やし行い、今のところ研究遂行に問題は生じていない。以上を総合的に考慮し、研究目的を達成するための本研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の成果を受けて、まずアルゴリズムの改良と計算プログラムの並列化の研究を進める。EMD あるいは HSA で利用している計算アルゴリズムを見直して、計算精度と計算速度の向上をめざす。また、プログラムのプロファイリングを行い、並列化のための最適化を行う。平行して、典型的な重力波信号をガウスノイズ、KAGRA(LCGT) 観測装置の予想のノイズやLIGO 観測装置のノイズに注入して解析を行い、時間決定精度の測定、Veto 解析を行い、HHT による重力波信号の検出効率を解析する。さらに、検出効率を改良するためのキーファクターを見つけ出す。これらの得られた成果をもとに、HHT を用いた重力波検出のアルゴリズムを確立する。また、複数の重力波検出器のデータを連係させて検出効率と解析精度の向上を行うための HHT 解析手法の開発も行う。さらに、HHT 解析により重力波信号が含まれる可能性が高いことが明らかになったデータに対して、パラメータ領域を限定してマッチドフィルタ解析を実行し、抽出された重力波信号に再度 HHT 解析を行い、重力波の性質を詳しく調べるという総合的な検出・解析手法を確立する。最終年度には、研究結果を総括して、Web等を通じて社会、国民を含めて広く公表する。また、今までに得られた結果、問題点、その解決策については、毎年行われる国際会議「重力波データ解析会議」などにて発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
HHTを用いた解析をする際の基本的なハードウェアについては、東日本大震災の影響で本研究の研究費の配分が遅れたために若干遅れている。計算プログラムの開発と計算の実行には現有の計算機を用ているが、平成24年度に計画している並列計算による高速化の研究のためには、現計算機(解析システム)を増強することが必要であり、平成24年度の中盤を目処に行なう。具体的には、HHT解析に限らず重力波データ解析では、一度に多くのデータにアクセスするため、HDD のスループットの速度と信頼性を要求するため、既製品のPCクラスター、および、アクセススピードの速いディスクアレイ(RAID HDD システム)を購入して、現計算機(解析システム)を増強する形で構築し、山梨英和大学に設置する。さらに、平成23年度に開発したNASA グループとは異なる独自のプログラムのクロスチェックや結果の議論のため、ハードウェア整備と同様の理由で平成23年度には実現できなかった対面での打合せのため、研究代表者がNASA に出向く。そのための旅費としても使用をする。得られた結果、問題点、その解決策については、国内外で開催される学会やworkshop、特に6月に予定されている国際会議「重力波データ解析会議」に参加し、発表を行うとともに、マッチドフィルタ解析などのデータ解析、数値相対論あるいは KAGRA (LCGT) 建設のコアメンバーなど、関連する研究者と議論し情報収集するための旅費としても使用をする。その他、現在準備中の論文の投稿費や出版費、消耗品の購入なども予定をしている。
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