研究課題/領域番号 |
23740211
|
研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
東 武大 摂南大学, 理工学部, 講師 (10516785)
|
キーワード | 国際情報交換 |
研究概要 |
平成24年度は、10次元の時空で定義された超弦理論から私たちの住む4次元時空がどのように生じるかについて研究を行った。超弦理論の非摂動論的定式化の候補としてIKKT行列模型が挙げられる。今年度はウィック回転をしたEuclid時空でのIKKT行列模型の数値シミュレーションによって、時空の対称性の破れの知見が得られた。 今年度は超対称性を持った6次元IKKT行列模型のSO(6)回転対称性の破れを調べた。ガウス展開法と呼ばれる解析計算によれば、SO(6)対称性がSO(d)に破れるときd=3が一番エネルギー的に安定であること、及び時空の潰れ方に関する詳細な情報が得られたが、今回の数値シミュレーションによってガウス展開法で得られた知見を再現する結果が得られ、これは第一原理計算より時空の生成の仕組みを理解するうえで重要な結果である。この成果は2012年6月に共同研究者のKonstantinos N. Anagnostopoulosによって国際会議Lattice 2012で発表された。 また、有限温度ゲージ理論の問題は、ゲージ重力対応を通して超弦理論におけるブラックホール解の性質を調べるうえで重要な問題である。2012年10月に出版した論文"New States of Gauge Theories on a Circle"では、高温領域に於いては、不安定な非閉じ込め相が、閉じ込め相に直接辿り着くのではなく、ゲージ場の固有値の配位が複数個の塊を成す中間状態を経ることが分かった。また、S1円上の1次元ゲージ理論に対応するKaluza Klein重力理論に於いて、固有値の配位が複数個の塊を成す中間状態が、S1円上に局在化する複数のblackholeに対応することを論じた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超弦理論において、時空の対称性の破れを調べる研究については今年度は着実な進歩がみられた。因子化法を用いて行列模型の数値シミュレーションを行う手法については、Euclid化した6次元IKKT模型におけるSO(6)回転対称性の破れを数値的に解明することが出来た。このことは、実際の10次元IKKT行列模型における時空の破れにおいて大きな示唆を与えるものである。 また、有限温度ゲージ理論の問題に関しても新しい知見が得られ、blackholeの性質について理解が深まったと考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
時空の生成に関しては、10次元IKKT行列模型でウィック回転をしないSO(9,1)ローレンツ対称性を持ったものに対する数値計算の方法が確立し、ある臨界温度で、9次元空間のうち3次元空間が広がることが分かった。この行列模型について調べることで、宇宙初期の時間発展について超弦理論の第一原理から解明することを目指す。 また、有限温度のゲージ理論の数値シミュレーションにおいて興味深い問題の一つに閉じ込め・非閉じ込め相転移の次数の問題が挙げられる。これについても、数値シミュレーション、large D展開などの解析的手法を相補的に用いて研究を進めたい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
この研究課題を遂行するためには、共同研究者との打ち合わせや研究会出席が不可欠である。そのため、研究会出席などの旅費として研究費を使用する必要がある。また、この研究課題の周辺の最近の進展について情報収集するためにも、文献を購入する必要があるため、研究費を用いて図書購入をしたいと考えている。
|