研究概要 |
平成25年度は以下の2つの成果を得る事が出来た。一つはユークリッド空間上のIKKT行列模型の回転対称性の破れである。平成25年度は簡単のために超対称性を持った6次元IKKT行列模型のSO(6)回転対称性について調べた。フェルミオンを積分して得られる行列式(10次元の場合はパフィアン)が複素数であることから、数値シミュレーションを行う上で所謂「符号問題」に直面する。この論文では、6次元IKKT行列模型に対して、複素数の分配関数の位相部分と相関のある物理量に拘束を課すことで符号問題を克服する方法論である「因子化法」を適用した。ガウス展開法という近似による解析計算からは、SO(6)回転対称性がSO(d)に破れ(d=2,3,4,5)d次元の広がった方向と(6-d)次元の縮んだ方向に分かれるとき、縮んだ方向の大きさがdに依らず一定であること、及び対称性が破れた後の体積がdに依らないことが予測されている。私たちの数値シミュレーションではこれらの性質を再現することに成功した。 もう一つの成果は有限温度のBFSS行列模型の閉じ込め・非閉じ込め相転移である(これに関しては論文投稿中)。この行列模型の数値シミュレーションによって、この行列模型の次元が小さいときには、閉じ込め・非閉じ込め相転移が1次相転移であることを示した。解析的な近似計算で、次元が大きい場合は高次相転移であることを合わせて考えれば、相転移の次数が次元に依存していることが明らかになった。これと類似した相転移の次元依存性は重力理論におけるGregory-Laflamme相転移や、流体におけるRayleigh-Plateau相転移でも知られている。有限温度の行列模型の相転移において、重力理論や流体との類似点を見出したことは、今後の重力、流体の研究において重要な意義を持つと考えられる。
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