研究課題/領域番号 |
23740212
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研究機関 | 香川高等専門学校 |
研究代表者 |
長谷部 一気 香川高等専門学校, 一般教育科, 講師 (60435469)
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キーワード | 国際情報交流(アメリカ) |
研究概要 |
本年度は昨年度の研究を更に発展させ、以下の2点についての研究を行った。①超対称な量子スピン状態におけるエンタングルメントの観点からのトポロジー的秩序の解析。②非コンパクトなホップ写像による一般次元における非可換双曲幾何の研究。 まず、①の超対称な量子スピン状態(SVBS状態)におけるエンタングルメントの解析から詳細に述べる。昨年度までの研究で、超対称な量子スピン状態の励起状態などの物理的性質は十分理解できた。そこで、今年度はそのトポロジー的性質について数値計算等を用いた解析を行った(京都大基礎研の戸塚圭介氏との共同研究)。具体的にはストリング秩序とエンタングルメントエントロピーを1次元系で計算を行い、それらがコンシステントであること、超対称がある場合にはバルクのスピンの偶奇性によらずトポロジー的秩序が存在することを示した。更に高い超対称性を有する量子スピン模型においても同様の解析を行い、低い超対称性と定性的には同様の結果が得られることを見た。超対称性が存在する場合、エンタングルメントスペクトルに必ず少なくとも二重縮退が現れること、すなわち超対称性がトポロジー相の安定性を保証していること、を示すことに成功した。これらの成果は、超対称性のある場合のトポロジー的秩序についての世界で初めてのものである。 次に②の非コンパクトなホップ写像による一般次元における非可換双曲幾何の研究について述べる。これまで申請者によってホップ写像を非コンパクトに拡張した非コンパクトホップ写像が構成されていた。もともとのホップ写像の量子化版が非可換球に対応する。それを今回の非コンパクトな場合に応用し、非可換な双曲体を具体的に構成した。そして、非可換双曲体の幾何学的な構造について詳細な議論を行った。低次元の構成はこれまでの研究によってなされていたが、今回の研究によって一般の高次元への拡張に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度においては当初計画した、非可換起幾何の手法を応用した超対称な量子反強磁性スピン状態のトポロジー的性質をエンタングルメントを用いて具体的に解析した。当該年度に予定していた、高次元(OSp(1|4))への拡張についても滞りなく進んでおり順調である。詳しく述べると、1次元の超対称な反強磁性スピン模型(VBS状態)についてのエンタングルメントスペクトルとエンタングルメントエントロピーを数値的に導出しその特徴的振る舞いが理解された。また、その振る舞いを特定の模型(SVBS)に限らず一般に行列積の形で書かれる場合にも同様の構造が現れることを示した。このように当初の予定通り進んでいる。 また、高次元非可換幾何の一般化として、非可換双曲体の構成を行った。これまで、高次元の非可換幾何は非可換球についての研究が行われてきたが、その一般化として非可換双曲体の構成を行い、その幾何についても深く理解することが出来た。非可換双曲体は自然に非可換球をその特殊な場合として含んでいるものになっており、これまでの研究の自然な拡張。一般化になっている。そのため、高次元非可換幾何自体の研究も順調である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で、反強磁性量子スピン系におけるトポロジー的性質と高次元の非可換幾何についての理解はほぼ達成した。今後は素粒子模型におけるこれまで構成を行ってきた非可換幾何の模型についての実現とその関連性について調べたい。特に今後、力をいれたいと考えているのはトポロジー的絶縁体との関連である。トポロジー的絶縁体は量子ホール系の高次元への拡張と見なすことが出来、そのダイナミックスは非可換幾何によって規定されるはずである。特に相関が強い、量子多体状態の物理を理解する上では、強相関の場合でも正確に成り立つ非可換幾何の手法が威力を発揮すると期待される。そのため、これまでの高次元の非可換幾何の数理を応用することによって、その理解を進めることを考えている。特に、Aタイプ、またAIIIタイプに分類されるトポロジー的絶縁体は非可換幾何と密接な関係がある。今後は、これらのトポロジー的絶縁体と非可換幾何の関係性を確立し、その関係性を応用したダイナミックの解析を行うことを予定している。 また、今年後構成した一般化された高次元の非可換幾何の超対称な場合の構成についても行う予定である。(非コンパクトな)ホップ写像から(双曲的な)高次元非可換幾何が量子化によって導出できるように、(非コンパクトな)超対称なホップ写像を量子化することによって、高次元の超対称な(双曲的)非可換幾何について解析を行うことを考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.本研究において数値計算、論文作成のためのソフトが必要である。また、論文取り寄せ、書籍の購入が必要である。更に、論文査 読、掲載のため出版社に支払うための費用が必要である。(計:20万円) 2.国内外への研究成果発表、また協力研究者との議論のための旅費が必要である。(計:40万円)
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