研究課題
運動量分散を介したテーパーレーザー冷却による24Mg+イオンビームの高速3次元冷却のため、開発した分子動力学(MD)シミュレーションコードを用いて、蓄積リング及びレーザーの設定条件を調整した。系統的なシミュレーションを行うため、本助成金によりハイパフォーマンスコンピュータ等を購入し計算環境を整備した。まずはクーロン結晶化の可能性の高い、低いビーム強度を対象とした。前年度の研究で検討したテーパー化レーザーにより、レーザーの周波数を高速にスキャンすることで、進行方向については、0.1%程度の運動量ばらつきを持つ連続ビームを数10ミリ秒以下の超短時間で0.0001%まで冷却できることが分かった。横方向については、スキャン完了後に冷却が起こり、冷却時間はリングの運動量分散とレーザーの離調に強く依存することが分かった。運動量分散を大きくかつ離調を小さくすることで、0.1秒程度の短時間で3次元冷却が可能で、クーロン結晶化できることが分かった。低い強度ではあるが、連続ビームにおいてもクーロン結晶を効率的に生成する手法を明らかにしたという点で意義がある。また、MDシミュレーションの課題である長計算時間に対する解決策の一つとして、MDコードを改良してマクロ粒子の概念を導入し、計算結果の正当性を確かめた。数100~数1000個の粒子数で検証したところ、極低温下で形成されるクーロン結晶状態の構造やビームサイズはN/M(N:実粒子数、M:マクロ粒子数)が大きくなるほど実粒子での計算からずれる傾向があった。しかし、N/Mが10程度以下であれば誤差は許容でき、効率的なMD計算の可能性が見出された。大きなN/Mでの計算を可能にするため、マクロ粒子を点電荷と見なさず、ある大きさを持たせる等の計算手法の改良を今後の検討課題としたい。
2: おおむね順調に進展している
目的であったイオンビームの3次元冷却について、リングとレーザーのパラメータ依存性を明らかにし、クリスタルビームが生成可能であることを理論実証できたこと、及びマクロ粒子を用いたMD計算の可能性を示すことができたことから、ほぼ予定通り進展していると考えている。
これまでの成果を発展させ、レーザー冷却によるより強度が高いビームの超低エミッタンス化とクーロン結晶化や秩序化の可能性について検討する予定である。また、イオンビームのレーザー冷却実験を行っている蓄積リング”S-LSR”(京都大学)の実条件下でのビーム結晶化の可能性を明らかにしたい。
関係する機器等を購入し、高速計算環境を整えていく計画である。また、研究成果の発表や連携する研究者との議論のため、国内外の出張を予定している。
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