研究課題/領域番号 |
23740214
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
若林 泰生 独立行政法人理化学研究所, 森田超重元素研究室, 基礎科学特別研究員 (80447359)
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キーワード | 新同位体 |
研究概要 |
本研究では、N=126閉殻の安定性による原子核の新たな存在領域を検証するため、新同位体である219Np(Z=93)や220Pu(Z=94)の合成実験を行う。 当該年度においては、平成23年度に行なった、新同位体216U合成実験により得られた結果の解析を主に行なった。この実験は、理化学研究所において、入射ビームに82Kr、標的に138Baを用いた、82Kr+138Ba→216U+4n反応により行なった。216Uに関して、予測断面積に比べ、約一桁小さい値である、合成断面積上限10pbまでの照射を行なったが、合成の確認には至らなかった。しかしながら、この反応系の複生成核で、3n反応により得られる、予測断面積が同程度の217U(既知核種)に関しては、概ね予測通りの合成のイベント数を確認でき、また、217Paなど、216Uを除いた複生成核に関しても、概ね予測通りの断面積であったため、反応系を変えた実験(例えば、137Ba標的を用いた3n反応での合成を試みる)が有効である可能性がある事が分かった。 実験で得られた複生成核である217Uのα崩壊に関して、報告されている遷移以外にも、213Thの励起状態への新たな遷移が存在する事が分かった。217Uは中性子数125の原子核であるが、216Paや215ThなどのIsotone(中性子数が同じ原子核)のα崩壊の系統性より、Consistentである。現在、理論計算を用いたアプローチを行なっており、論文にまとめるための議論を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
220Puや219Npに比べ、予測断面積が大きい216Uに関して合成が確認できなかったため、216Uに最適な反応系のサーチを行い、その後、220PUなどの合成実験を行う。
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今後の研究の推進方策 |
中性子魔法数126を有する新同位体合成実験という実験課題を原子核課題採択委員会に審査してもらい、採択された場合、平成25年内に実験を行う。また、実験を遂行するために必要となる標的製作・標的製作装置を行う。 解析で得られた結果を過去の実験データや理論計算などを用いて比較・議論し、論文にまとめる。もしくは、今後行う実験で得られる結果と併せて論文にまとめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度においては、219Npや220Puの合成実験を行うに至っていないため、それらの実験を行うための試料などをの購入を行なっていない。また、標的製作のためのスパッタ装置の改良に遅れが出ているため、予定してた費用を使用するにいたらなかった。また、回転標的用のフレームは研究室内にまだ在庫がある状態なので、今年度は購入しなかった。 次年度においては、216U合成実験や上記で述べた219Npや220Pu合成実験を行う予定であるので、・標的用の安定同位体試料や入射ビーム用の安定同位体試料の購入、・標的製作に必要なバッキング(アルミ、もしくはチタン)の購入、・標的フレームの購入、・スパッタ装置の改良に必要な製作物、・実験協力者との実験打ち合わせや議論のための旅費や謝金に使用する予定である。
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