研究課題
質量数32のマグネシウム同位体32Mgは、従来の核構造の常識から考えると、中性子魔法数20を持つために球形に近い構造を持ち、励起にしにいと考えられてきた。しかし、短寿命核ビームの発達に伴って、32Mg近傍核の実験研究が行われ、核構造が劇的に変化していることが判明し、この領域は「反転の島」と呼ばれている。この核構造変化の原因として、核力のテンソル力成分が従来考えられていたよりも大きかったために、各粒子軌道のエネルギー固有値が中性子数に伴って大きく変化したと考えられている。各軌道の変容を見るには、陽子数が偶数でかつ中性子数が奇数の偶奇核の励起状態の系統的変化を見るのが良い。しかし、今まで適当な実験手法がなかったために、殆どの状態のスピンパリティが決定されていない。本研究では、32Mg近傍核の31Mgの低励起状態のスピンと共に、各状態と30Mg基底状態波動関数との重なりを示す分光学的因子を、申請者が提案した新しい方法で測定した。新手法では、31Mgの束縛状態を直に調べるのではなく、その価中性子を価陽子に変化させたアナログ状態を調べる。核力は、電荷に因らないので、中性子を陽子に変えても同じ構造を持てる。そのアナログ状態は、陽子共鳴弾性散乱で共鳴として観測される。実験は CERNにある短寿命核施設ISOLDEで行った。レーザー共鳴イオン化した30Mgイオンを核子当たり2.92MeVまで加速、厚いポリエチレン標的に照射し、実験室系で0度近傍散乱を測定する。この角度は重心系では180近傍散乱になり、反跳陽子のエネルギーが最も高くなると共に、クーロン散乱の影響が最も少なく共鳴を探索できる。実験の結果、3共鳴を観測することに成功した。また、解析の結果から基底状態と第1励起状態の分光学的因子が非常に抑制されていることが分かり、世界で初めて「反転の島」の境界を明らかに出来た。
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European Physical Journal A
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http://kekrnb.kek.jp/