研究課題/領域番号 |
23740216
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
飯沼 裕美 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 助教 (60446515)
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キーワード | パルス状磁場 |
研究概要 |
H23年度に立ち上げたパルス磁場発生装置の、磁場測定システムを構築した。 1)時間変動する磁場を測定する為のピックアップコイルの作成、2)電源や、コイル電流端子部分からの電磁波ノイズを測定するシステムの構築、3)ノイズ源の調査およびシールド、4)目的とするパルス磁場の空間分布測定用プローブ架台の製作を行った。 第1ステップとして、磁場が発生する領域の中心に、測定用プローブを固定し、その先端にいくつかの種類のピックアップコイルを試し、ノイズとシグナルのバランスの良いピックアップコイル仕様を決定した。電磁波ノイズ環境はH24年度購入のオシロスコープで常にモニターしながら電磁波ノイズ源の場所を特定し、適切なシールドを施した。第2ステップは、所定の空間をピックアップコイルでスキャンし、磁場の空間分布を測定した。H24年度はプローブサポートの可動領域に制限があるため、1次元のスキャンに止めた。測定結果を3次元磁場計算ツールOPERAの結果と比較し、適切な磁場を得ていることを確認した。第3ステップは、パルス磁場の時間応答の調整である。コイルのインダクタンスをアルミリボンなどを付加・調整して小さくし、時間応答を400nsecから300nsec程度まで縮めた。目標は200nsecなのでさらなる調整が必要である。これらの作業のほかに、周辺機器への電磁波ノイズの影響も調べた。特に、実験本番で使用するシリコン検出器への影響が懸念され、パルス磁場発生装置とシリコン検出器の距離を変えたり、グランド線を変更したりして軽減を試みているが、さらなる調査、有効なシールド方法の検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H24年度の目標は、パルス磁場を検知すること、空間分布を測定することであり、研究実績の概要で述べた通り達成している。当初の予想よりも電源から発生する電磁波環境がシビアであり、信号を見つけるまでに予定の2倍程度の時間を必要としたが、空間分布測定用プローブの可動領域を最低限に抑えた装置にすることで時間ロスを吸収できた。一方、コイルインダクタンスが設計や、OPERA計算の結果よりも大きく、パルス磁場の時間応答が十分早くない。これについても、アルミリボンをコイルの周りに付加することで、インダクタンスを小さくする手法を確立した。しかし、まだ目標とする時間応答を達成していないのでアルミリボンの幅や、厚さを変えて、また設置の位置を調整してインダクタンスの変化の仕方を調査している最中である。これを完結させる必要があるのと、磁場強度を定量的に測定する手法を検討する2点を課題として残している。
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今後の研究の推進方策 |
1)コイルインダクタンスの調整(インダクタンスを小さくする)と、測定磁場の絶対値評価を行う。ピックアップコイルの測定磁場強度校正の手法を検討する。 2)実際の実験で使用するシリコン検出器をパルス磁場中で動作させ、シリコン検出器の信号を確認する。それを踏まえて、電源からの電磁波ノイズシールドを強化する。 3)本年度は最終年度なので、国内外の学会での成果報告ならびに、論文投稿を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた状況は、購入を予定していた装置(差動アンプ)を、他の研究グループより短期借用が可能になり、まずは性能を確認してから実際に購入するように方針を変えたため。 1)電磁波ノイズと信号を分離する為の差動アンプを購入する。 2)磁場測定用ピックアップコイルの追加、 3)3次元空間分布測定を可能にするため、プローブ駆動装置を改良する。
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