研究課題/領域番号 |
23740221
|
研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
阪井 寛志 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 助教 (50345229)
|
キーワード | 超伝導空洞 / エネルギー回収ライナック / CWライナック / モニター / 超精密測定 / 加速器 / 極低温 / ビーム不安定性 |
研究概要 |
本年度は、昨年度のテストベンチでの評価を基にして、実機のレーザー位置変位計を製作し、製作したERL用クライオモジュールを用いた2K冷却中の位置測定を行った。特にASE光源の4軸方向分配による強度不足が問題であったため、空洞の一か所のみの垂直、水平の2方向の測定に絞り、2軸化への方針変更を行った。また、本変位計とは独立に超伝導空洞に設置した光学ターゲットを用い、極低温中での空洞の変位を追随可能とし、冷却中の変位計の読みの相補チェックを行った。具体的には光学ターゲット中心をLEDで照らし、テレスコープで読み取ると同時に光学ターゲット上面、横面に作成した参照面の動きを本変位計にて測定することで水平方向と垂直方向の冷却中の動きに対する光学ターゲットとの相関データを取得可能とした。 クライオモジュールの2Kまでの冷却中の測定の詳細を述べる。測定光学ターゲットはセンサーのファイバー出口から600mm離れた断熱真空槽内に置かれ、ビューポートを通して水平方向、垂直方向の変位を冷却中常時測定した。特に加速器室内での温度変化抑制のため、温度安定化ファイバーを用いて測定を行った。室温から2Kまでの冷却は2週間かけてゆっくり行われ、常温から2K冷却後の温度変化はモジュール熱設計通りに、水平方向で0.2mm、垂直方向で1mmの変位が測定された。 本変位計にて達成された結果は、1)テレスコープの精度の±0.1mm程度で光学ターゲットとの相関が得られたこと、2)特にテレスコープの精度では見られなかった冷却中の空洞温度との詳細な相関が得られたこと、3)2K到達温度での安定な状態では水平、垂直方向とも変位計の測定値が±10μmの精度で12時間以上安定であったことである。 昇温後、変位が元の位置に戻っていることも確認し、本変位計がクライオモジュール内の空洞の変位を±10μmの精度で測定可能であることを実証した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の目的に書いた項目A)~D)のうち、前年度までに「A)精密位置測定装置のテストベンチでの性能評価」、及び、「B)ERL用超伝導空洞のクライオモジュールの設計、実機精密位置測定装置の設計」が終わり、今年度にて本研究開発の鍵である「C)実機クライオモジュールでの精密位置測定装置の実証実験(10μm以下の測定)」が終了した。次年度に研究予定の項目である「D)本精密位置測定装置を用いたERLのビーム不安定性の詳細研究」に向けて順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度にて本精密位置測定装置の2軸化を行い超伝導空洞の水平方向、垂直方向の2軸の位置の精密測定が可能となった。平成25年度はERL試験加速器のビーム運転が始まり、超伝導空洞に対するビーム不安定性の基礎研究を行う。具体的には空洞内に励起する高次モードによるビーム不安定性(HOM-BBU)や他、ビームの位置、バンチの電荷量やビーム電流量、バンチ長、連続ビームとパルス運転での運転モード、これらを変えた際のビーム変動を追い、ビーム不安定性の違いを調べると同時に、ビームから誘起される空洞起因の高次モードのモノポールモードによる発熱の抑制などが評価の対象である。これらビーム運転実験中に空洞の位置が変化していないか、振動を起こしていないかなどを常時、モニターする。また発熱などにより、空洞が変位していないかなどの詳細な情報も本位置測定装置にてモニターする。不安定性が大きい場合などはビームだけではなく、空洞位置そのものを変位させ、変位量を位置モニターでモニターし、周回ビーム軌道を変えずに空洞変位に対するビームの応答を測定することも研究の対象である。 これらのデータの解析を行い、大電流ERLビーム時におけるビーム不安定性の解明と解決を試みる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
今年度の前倒し請求にて、次年度に請求した助成金は無くなったが、前倒し請求にて購入した取付冶具及びLEDライトセレクターが最終的に当初予定額よりも安くなったため、残額を次年度への予算とした。 次年度分の予算の使用は、主に国内旅費、学会発表用の旅費、また論文執筆時の英文校閲などに充てる予定である。
|