【最終年度の成果】スキルム型密度汎関数を用いて原子核の変形・核子の超流動性を考慮に入れたスピン・アイソスピン応答計算を遂行した。特に、中性子と陽子の間にはたらく対相関に着目して、その相関に関連した集団モードの発現可能性を調べた。具体的には、陽子数・中性子数がともに20ー30の原子核における低励起ガモフ・テラー励起、また中性子ー陽子対振動状態の微視的構造を詳しく調べた。前者のガモフ・テラー励起に関しては、阪大RCNPにおける最近の実験結果を理解するのに、アイソスカラー型の中性子ー陽子対相互作用が重要な役割を果たしている点を見出した。また、後者の中性子ー陽子対振動状態に関しては、奇奇核の低励起状態にスピン3重項型超流動性のソフトモードが現れる可能性を世界で初めて指摘した。この新しいソフトモードと低励起ガモフ・テラー状態との間に関係があることも分かりつつあり、今後の進展が期待できる。 【研究期間全体を通じての成果】大規模並列計算機を駆使して安定核から不安定核、球形核から変形核に対する線型応答計算を遂行し、巨大共鳴状態の微視的構造と核物質、更には核子間相関とベータ崩壊率との関係を明らかにした。原子核密度汎関数法による集団モードの微視的記述に関して、世界的にもユニークな貢献ができた。実験的に知られている様々な集団励起モードの特徴を、統一的な理論枠組みで記述するという目標に向けての大きな前進があったと言える。
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