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2011 年度 実施状況報告書

ドメインウォールフェルミオンによる超対称ヤンミルズ理論の動的シミュレーション

研究課題

研究課題/領域番号 23740227
研究機関独立行政法人理化学研究所

研究代表者

ENDRES MICHAEL  独立行政法人理化学研究所, 初田量子ハドロン物理学研究室, 国際特別研究員 (80598160)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワード格子ゲージ理論 / 超対称性 / フェルミオンアルゴリズム
研究概要

昨年度の研究活動は、格子超対称性の数値研究だけでなく、より広い範囲の格子場の理論において遭遇する数値的困難を解決する技法の開発も含んでいる。これらの技法は非相対論的格子理論や格子QCDのみならず格子上の超対称性理論や標準模型を越えたゲージ理論への応用の可能性を持っている。以下、私が挙げた成果を簡単にまとめる。格子上の超対称性理論のシミュレーションに関しては、N=1の超対称ヤンミルズ理論に対して、ドメインウォールフェルミオンとDBW2作用を用いて、4種類の異なったゲージーノの質量のそれぞれに対して、1000個のオーダーのゲージ場配位を生成した。これらに含まれる物理の最初の理解に向けて、残余質量、トポロジカルチャージ、静的クォークポテンシャル、平均プラケット、カイラル凝縮、アジョイントパイ中間子の相関関数などの基本的物理量を測定した。数値的技法に関しては、非常にノイズの大きい多フェルミオンの相関関数から、その統計分布の性質に注目することでエネルギーの値を引き出す新しい技法を開発した。共同研究者と私は、特に、エネルギーの値をこれまでよりより小さいSN比で引き出すことができる観測量を発見した。この評価法は同時にある種の系統誤差を含むのだが、統計分布に関する経験的な情報があれば、この系統誤差は統計誤差より小さいことがしばしば示せ、結果として評価の不確定さを小さくできる。これらの技法は、いわゆるユニタリーフェルミオンの研究に直接的応用を持っている。また、これらの技法がより一般にゲージ理論におけるノイズの大きい相関関数から情報を引き出す際に有用になると思われる強い示唆がある。N=1の超対称ヤンミルズ理論の低エネルギースペクトラムの研究においてノイズの大きな非連結ダイアグラムの寄与が非常な障害になることを考えると、同様の技法が超対称ヤンミルズ理論の研究においても極めて有用になると思われる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

超対称ヤンミルズ理論の数値シミュレーションに関しては、残念ながら進展はゆっくりである。これは主に、ゲージ場の配位の生成にこれまで使用してきた計算機(NY Blue)上で利用できる計算資源が限られていることによる。今後の物理的解析には、この計算機上で利用できる資源だけでは不十分なようなので、今後は他の計算機資源、例えば理研のクラスター計算機を利用することが必要である。一方、数値アルゴリズムの開発の側面に関しては、私の研究業績は大変重要なものであったと考えている。上で述べた、ノイズの大きな相関関数から情報を引き出す数値的技法は、フィジカル・レビュー・レターに掲載された。フレーバーを含む格子QCDのような格子ゲージ理論を研究している研究者からの情報では、多フェルミオン相関関数に限らず、多くの観測量に関して長い裾野を持つ統計分布(これが上の技法の重要なポイントなのだが)が観測されているようである。そこで、我々が上で開発した技法が、エータ中間子やグルーボールの相関関数などの観測量、、また同様の相関関数を持つ超対称ヤンミルズ理論のより効率的な数値計算、に応用できないか大変関心を持っているところである。

今後の研究の推進方策

次年度以降も、格子上の超対称性理論に関する研究を計算機資源が許す限り継続する。理想的には、必要とする計算機資源が得られ、現在の計算コードが移植可能な限り、既に生成したN=1の超対称ヤンミルズ理論のゲージ場の配位の解析を継続する。これは、ディラック演算子のスペクトラムの詳細な解析、ゼロモードと超対称ヤンミルズ理論のトポロジーとの関係、そして、グルー・グルー、グルー・グルイーノ、グルイーノ・グルイーノといった結合状態のスペクトラムの測定を含んでいる。これらに加え、数値アルゴリズムに関する研究を継続する。この研究は格子上の超対称ヤンミルズ理論に限らないより広い範囲の問題で有用となりうるものである。この研究はSN比の改善や多フェルミオン相関関数を計算する際の困難を回避するための技法の開発も含んでいる。前者の問題に関する進展は、大きなノイズが障害となりうる格子上の超対称ヤンミルズ理論に対する更なる研究において非常に有用であると考える。

次年度の研究費の使用計画

平成24年度には当該研究分野での国際研究集会の開催を予定し、そのために平成23年度の予算を多めに残しておいた。その他の使途としては、パーソナルコンピュータの購入、海外出張と国内の出張、書籍、文房具への支出を予定している。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2011

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)

  • [雑誌論文] Noise, sign problems, and statistics2011

    • 著者名/発表者名
      Michael G. Endres, David B. Kaplan, Jong-Wan Lee, Amy N. Nicholson
    • 雑誌名

      Physical Review Letters

      巻: 107 ページ: 201601

    • DOI

      10.1103/PhysRevLett.107.201601

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Lattice Monte Carlo calculations for unitary fermions in a harmonic trap2011

    • 著者名/発表者名
      Michael G. Endres, David B. Kaplan, Jong-Wan Lee, Amy N. Nicholson
    • 雑誌名

      Physical Review A

      巻: 84 ページ: 043644

    • DOI

      10.1103/PhysRevA.84.043644

    • 査読あり

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公開日: 2013-07-10  

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