研究課題
強相関物質である層状鉄酸化物LuFe2O4においては、電荷秩序(CO)がもたらす特異な誘電性が注目を浴びている。本研究では、この誘電特性の光制御を実現し、その機構をテラヘルツ領域ポンププローブ分光によって解明することを目的としている。i) 定常測定;CO転移温度より高温で、つまりCOの(熱的な)融解に伴って光学伝導度σは急激に増加した。即ち、電荷の局在/非局在化に伴う変化をテラヘルツ帯で敏感に検出できる事がわかった。また、磁気転移に伴って特定のフォノンピークが敏感に変化(強度、幅)する事を見出した。ii) 過渡測定(CO);CO相で光照射を行い、COの熱的融解と同程度以上のσの増加を観測した。この現象はCOの光融解(光誘起相転移)と言えるが、瞬時に(~ 1 ps)に生じていることから、熱的な融解とは本質的に異なっている。実際、この物質は高温で金属的でないにも関わらず、光励起差分σ(Δσ)スペクトルはDrude金属のものに類似していた。Δσの緩和過程は早い寿命(~ 1 ps)の成分および遅い寿命(数十-100 ps)の成分を持つが、各々の温度変化は鉄原子層内(面内)COの転移点および面間COの転移点を特徴的温度としており、即ち両者で異なっていた。この結果から、前者が面内COの、後者が面間COの復元過程を反映することがわかり、光融解したCOの緩和ダイナミクスが明らかとなった。iii) 過渡測定(磁気秩序);上述のCO光融解は、面内方向の偏光を持つ光励起によって起きる。一方で注目すべきことに、面間偏光の光励起によっては超高速(~ 1 ps)なフェリ磁性-反強磁性転移が起きることがわかった。即ち、励起光の偏光を通じて全く異なる光誘起相転移現象を選択的に起こす事ができた。この機構の違いにおいては、面間/面内方向の異方性が本質的な役割を果たしている。
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Phys. Rev. Lett
巻: 110 ページ: 106401
DOI:10.1103/PhysRevLett.110.106401
Journal of Luminescence
巻: 133 ページ: 149-151
10.1016/j.jlumin.2011.12.051
http://femto.phys.tohoku.ac.jp/