研究課題/領域番号 |
23740245
|
研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
橘 信 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (40442727)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 巨大圧電物質 / 単結晶 / 熱測定 / モルフォトロピック相境界 |
研究概要 |
本研究の目標は、高圧合成などの特殊条件における強誘電体や巨大圧電効果物質の探索と、熱伝導率と比熱などの精密熱測定による特異な強誘電物性の解明である。特に、熱測定によりナノスケールやメゾスコピックスケールの相分離現象と巨大圧電応答特性の関係を明らかにし、その理解を物質探索にフィードバックすることで新規な強誘電体や巨大圧電効果物質の探索を試みる。これまで本研究の代表研究代表者は、鉛系リラクサー強誘電体にPbTiO3をドープすることで現われる強誘電領域の発達と巨大圧電特性の関係について、良質な単結晶の比熱と熱伝導率を測定することにより重要な知見を得た。当該年度では、このような手法をさらに多くの物質系に応用し、例えばKTaO3に少量の不純物をドープすることによって現われるリラクサーの振る舞いや、強誘電メモリーとして有望なBi系強誘電体の特異な熱物性を明らかにした。また、新しいフラックスを開発し、これまでに良質な単結晶が得られていない強誘電体についてフラックス法による単結晶育成を試みた。また、スピネル型のCdCr2S4とCdCr2Se4の良質な単結晶を育成し、比熱と熱膨張率の精密測定を行った。CdCr2Se4は強磁性体として通常の振る舞いを示したが、CdCr2S4は強磁性転移温度以下で負の熱膨張率と特異な比熱の寄与を示した。また、比熱と熱膨張率からグルナイゼン定数などの重要なパラメーターを得ることができた。今後はこのような手法を多くの強誘電体に試みる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目標は、特殊条件における強誘電体や巨大圧電効果物質の探索と、熱伝導率と比熱などの精密熱測定による特異な強誘電物性の解明である。物質探索については、KTaO3に少量の不純物をドープした系や、Bi系強誘電体について良質な単結晶を得ることに成功した。また、いろいろな新しいフラックスを開発し、これまでに良質な単結晶が得られていない強誘電体について単結晶育成を試みた。精密熱測定については、KTaO3に少量の不純物をドープすることによって現われるリラクサーの振る舞いや、強誘電メモリーとして有望なBi系強誘電体の特異な熱物性を明らかにした。また、スピネル型のCdCr2S4とCdCr2Se4の比熱と熱膨張率の精密測定を行った。これらの研究から重要な結果が得られ、本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究では、高圧合成などの特殊条件における強誘電体や巨大圧電効果物質の探索を目標にしており、今後は物質・材料研究機構既設のベルト型プレスを用いた6-10GPa、1500℃の条件における高圧合成による新物質の探索を試みる。これまでに見つかっている強誘電体や圧電物質のほとんどは常圧の通常の合成条件で見つかったものであり、高圧下で物質の探索を行うことにより多くの面白い新物質が得られると考えている。また、精密熱測定による特異な強誘電物性の解明については、他の系でも引き続き研究を行う。特に、熱測定によってナノスケールの相分離現象と巨大圧電応答特性や特異な強誘電物性の関係を明らかにした後、その理解を物質探索にフィードバックすることで新規な強誘電体や巨大圧電効果物質の探索を試みる。また、比熱と熱膨張率の精密測定を多くの強誘電体について行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
フラックス法による単結晶育成で必要な白金ルツボの改鋳に20万円ほど必要である。また、炉心管や試薬の購入に30万円ほど必要である。
|