• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実施状況報告書

人工原子クラスターにおけるスピン状態の研究

研究課題

研究課題/領域番号 23740248
研究機関独立行政法人理化学研究所

研究代表者

天羽 真一  独立行政法人理化学研究所, 河野低温物理研究室, 基礎科学特別研究員 (90587924)

キーワード量子ドット / スピン相関
研究概要

電子を数個閉じ込めることのできる人工原子は、電子の個数や、ポテンシャルの形状、軌道縮退など、電子状態を厳密に制御することができる。本研究ではその厳密に制御された人工原子系を用い、人工原子を配列させた「人工原子クラスター」を用意し、今までの物質にない機能やスピン相関を示す人工原子結晶を目指した研究を行う。本研究では「磁性」に着目し、人工三原子分子や多軌道を内包する人工原子配列を用いて、多彩なスピン相関をもつ人工分子を生み出し、その中でのスピン相関の解明を目指している。
前年度には、3軌道を持つ2重ドットにおいて、3電子スピンが揃うことによって見られる4重項スピンブロッケイドを見出した。また、偶然形成された4つの人工原子が結合した系でのスピンブロッケイド条件下でのヒステリシスを見出したが、起源が明らかとなっていない。
本年度は、(1)直列に繋がった人工三原子分子に、2重ドットと同様の4重項スピンブロッケイドを確認、報告した。(2) 4重項スピンブロッケイドの解除を生み出す核スピンとの結合に着目し、スピン状態の対称性に起因した4重項・2重項の結合強度の違いを明らかにした。(3) 4つの人工原子が結合した場合で見られたヒステリシスの変化にヒントを得て、よりシンプルな系に立ち返り、理解することを試みた。単純な2重量子ドットの高バイアス条件下でスピンブロッケイドの起源となる状態が入れ換わることによる特徴的なヒステリシスの変化を観測した。この変化は、前年度で見られた4つの人工原子の場合にも適用可能であり、より人工原子が結合した系でのスピン状態を理解するための手段となるものである。(4) ヒステリシスの変化と同時に、スピンブロッケイドの原因となる状態の変化が見られる条件下で、電流の2値的な振る舞いを観測した。得られた電流の時間変化は、核スピンの安定点間の移動で理解できる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

前年度得られた3電子スピン状態の知見をスピンブロッケイドを通じて環境との相互作用にまで広げて、理解しようと努めている。特に、4つの人工原子が結合した系で得られたヒステリシスの変化が、電流閉塞している状態の変化によるものと考えられたため、よりシンプルな系である2重ドットへ、その知見を適用し、2重ドットで新たなスピンブロッケイドとヒステリシスを観測している。また、3電子スピンのスピン状態の対称性と核スピンとの結合強度の違いを議論できるようになってきており、スピンブロッケイドの解除をもたらす核スピンが、寄与するスピン状態を理解するための手段となることを示している。
このように、スピン状態のみならず、環境との相互作用への拡張と、多重ドットのようなより複雑な系の実験結果がフィードバックされ、シンプルな系に立ち返ってみて、同様の新たな現象を確認するなど、得られた知見が広がりを持っていることを示されており、研究の展開に拡がりが見られている。

今後の研究の推進方策

3つの人工原子が三角に結合した三原子分子に注力し、素子の作製、環状結合の確認を進める。直列3重結合や3軌道の人工分子については、目標となるスピン相関の理解は達成しており、環境との相互作用を主に追及する。特に、NMRを用いた核スピンの操作を行い、より明瞭に環境との相互作用の強弱を理解し、発展を目指す。また、多軌道を内包する量子ドットにおける電子とフォノンの相互作用についても、理論との比較が行われつつあり、出来る限り早くまとめて、報告できるようにしたいと考えている。

次年度の研究費の使用計画

次年度は、本計画の最終年度であるので、特に、学会報告や論文での報告にも力を入れて、進めて行きたいと考えている。特に、3軌道・3電子のスピンブロッケイドについては、できるだけ早く論文化を進めていく。また、3電子のスピンブロッケイドの電流の時間変化においては、周期的な振る舞いを観測し、系統的な変化をもつデータが得られている。現在、生物におけるリズムと比較しながら、理論的な側面を検討している。電流の時間変化については、長らく、理論的に解明することができておらず、数値計算とも組み合わせて、その起源の解明に努めたい。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Two- and three-electron Pauli spin blockade in series-coupled triple quantum dots2013

    • 著者名/発表者名
      S. Amaha, W. Izumida, T. Hatano, S. Teraoka, S. Tarucha, J. A. Gupta, and D. G. Austing
    • 雑誌名

      Physical Review Letters

      巻: 110 ページ: 016803

    • DOI

      10.1103/PhysRevLett.110.016803

    • 査読あり
  • [学会発表] スピンブロッケイドの電流閉塞状態の遷移と電流の2値的振る舞い2013

    • 著者名/発表者名
      天羽真一,都倉康弘,黒澤元,久保敏弘,近藤裕佑,樽茶清悟,河野公俊,大野圭司
    • 学会等名
      日本物理学会 第68回年次大会
    • 発表場所
      広島大学
    • 年月日
      20130328-20130328
  • [学会発表] 共鳴トンネル電流に対するスピン一重項電流閉塞の効果2012

    • 著者名/発表者名
      天羽真一,樽茶清悟,河野公俊,大野圭司
    • 学会等名
      日本物理学会 2012年秋季大会
    • 発表場所
      横浜国立大学
    • 年月日
      20120920-20120920

URL: 

公開日: 2014-07-24  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi