研究課題/領域番号 |
23740250
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
柳澤 達也 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10456353)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 重い電子系 / 隠れた秩序 / 超音波測定 / 弾性定数 / 四極子感受率 / アクチノイド / 静水圧効果 / 国際研究者交流:ドイツ |
研究概要 |
1、重い電子系URu2Si2の隠れた秩序相の問題に対し,Rh希釈系のU(Ru1-xRhx)2Si2 (x = 0,0.02,0.07)単結晶試料を用いて高分解能超音波測定 (測定周波数f ≦ 175MHz)を行い,弾性応答の観点から反強四極子秩序の検証を行なった.Rhドープによって誘起される反強磁性秩序相での弾性応答を初めて観測した.反強磁性相での横波弾性定数C44,C66,(C11-C12)/2の変化量が,縦波弾性定数C11に比べてそれぞれ1/60, 1/500, 1/20程度であることから,これらのモードに対応する歪みは生じておらず,10E-5の精度内でRhドープ系における反強磁性転移前後で格子の対称性が保たれていることを確認した.一方,母物質に現れる弾性定数(C11-C12)/2のソフト化が隠れた秩序が消失するx = 0.07においても現れ、極低温で一定値に収束する振る舞いを得た.2、参照物質ThRu2Si2の弾性定数を測定し、それをURu2Si2の弾性定数と比較し,擬似的に格子・フォノンの寄与を差し引く事により、5f電子の弾性定数への寄与を浮き彫りにした.その結果、URu2Si2ではΓ3対称性の歪み場に対応する弾性定数(C11-C12)/2だけに5f電子の寄与に依るソフト化が生じていることが解った。3、平成23年楠瀬らによって提案された、隠れた秩序変数の有力な候補であるxy(x^2-y^2)型反強電気十六極子秩序の可能性を検証した.隠れた秩序相において H || [100]と H || [110]に磁場を印加した場合の弾性定数(C11-C12)/2, C66の温度, 磁場変化を比較したところ10E-5の精度内では有意な差は観測されない.よって, 少なくともH ≦ 8 Tのc面内磁場中弾性定数測定で誘起四極子による応答は実験精度内では現れないと結論できる.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ハイブリッドピストンシリンダセルを用いた静水圧下に於ける超音波実験の準備が遅れている。理由は、ピストンシリンダセルに内蔵した温度計の破損である。本年度はセルを作り直し、セルノックス温度計の較正を完了したため、平成24年度から静水圧下超音波実験を再開できる。尚、磁場中弾性応答の実験により反強十六極子秩序モデルの検証作業が進捗したため、当初の研究目的の一部は達成されたと言える。
|
今後の研究の推進方策 |
平成23年の研究中途段階で楠瀬らによる最新理論提案(反強十六極子秩序)があった。超音波によりその検証が可能であることが彼らの論文に明記されており,研究代表者はその検証実験の優先順位が静水圧下実験よりも高いと判断し,平成23年後半は磁場中弾性応答の検証実験に注力した。その結果、実験室レベルの静磁場強度(~ 8T)では理論モデルの証拠が得られなかったため,平成24年6月にドイツ,ドレスデン強磁場研究所での50 T強のパルス磁場実験を予定している.これらは,隠れた秩序変数の検証を超音波実験によって行なうという本研究計画の趣旨に沿った実験であるため,研究計画の変更には該当しないと考える.一方,従来の研究計画にある静水圧効果は平成24年度から再開する予定.
|
次年度の研究費の使用計画 |
経費の削減の結果生じた使用残額について,平成24年度のドレスデン強磁場研究所での国際共同研究のための旅費ならびに,静水圧下超音波実験を行なう為の冷媒代の一部に充てる予定。
|