研究概要 |
銅酸化物などの強相関物質に強い電場をかけた時に誘起される非平衡状態についての基礎理論を構築することが本研究課題の目標である。そして、応用として、金属絶縁体(モット)転移や超伝導・磁性転移を電場や強力なレーザー光によってコントロールする方法について考察し,非平衡相転移の一般論を拡張する。併せて新奇計算手法の開発として、最近開発されたハバードモデルに対する非平衡動的平均場理論をさらに発展させていく。具体的には、以下のように手法開発とその物理への応用を研究の軸とする。(a)非平衡動的平均場理論の手法開発(b)非線形伝導―実験と理論の矛盾の解消(c)非平衡相転移―秩序の外場による制御 クラスター化DMFT(d)冷却原子気体の非平衡ダイナミックス。平成23年度の研究内容は非平衡動的平均場を用いた研究がPhys. Rev. Lett.誌に掲載された(N. Tsuji, T. Oka, P. Werner, H. Aoki,Phys. Rev. Lett. 106, 236401 (2011)).さらに、関連する研究として相関系の緩和現象についてK. Hashimoto, N. Iizuka, and T. Oka, Phys. Rev. D 84, 066005 (2011)、また、光誘起輸送現象に関してT. Kitagawa, T. Oka, A. Brataas, L. Fu, and E. Demler, Phys. Rev. B 84, 235108 (2011)に研究を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の目標は非平衡動的平均場理論の拡張を行い、電場をかけたモット絶縁体の非平衡状態の研究を行うことにあった。Phys. Rev. Lett.誌で掲載された論文では、この目標にそった研究が行えた(N. Tsuji, T. Oka, P. Werner, H. Aoki,Phys. Rev. Lett. 106, 236401 (2011))。具体的には電場によって反転分布を実現した場合、非平衡系特有の相転移が起きることを明らかにした。一方、当初のもう一つの目標であった、Migdal-Eliashberg理論を用いた電子格子相互作用の導入につては現在計算手法の開発の段階にある。Migdal-Eliashberg理論は電子系と比較的弱く結合したフォノン系を取り扱う理論的手法であり、過去にはフォノン機構の超伝導体の理論(BCS理論など)において広く用いられててきた。Migdal-Eliashberg理論を非平衡系に対して拡張し、動的平均場理論と結合させるために、現在、Keldyshグリーン関数法の拡張を行っている。冷却原子の非平衡ダイナミクス:平成23年度にHarvard大学に滞在し、冷却原子の非平衡ダイナミクスに関してE. Demler氏らと研究打ち合わせをおこなった。動的に誘起されるトポロジカル効果(光誘起ホール効果)の冷却原子気体への応用を念頭に置いている。平成23年度の研究結果についてはT. Kitagawa, T. Oka, A. Brataas, L. Fu, and E. Demler, Phys. Rev. B 84, 235108 (2011)にまとめられた。
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