研究課題/領域番号 |
23740264
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
谷口 淳子 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (70377018)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 1次元量子系 / 朝永‐ラッティンジャー液体 / ヘリウム3 / ヘリウム4 |
研究概要 |
本研究課題『1次元細孔中の液体3Heを用いた朝永‐ラッティンジャー(TL)液体の研究』の目的は,細孔中3Heの比熱・帯磁率を測定し,バルクの液体3Heの振る舞いと比較することにより,1次元3Heの性質を明らかにすることである。その目的のため,具体的には、二つの実験的研究,1.比熱(有効質量)測定,2.帯磁率(反対称ランダウパラメータ)測定を計画している。初年度である平成23年度は、1.比熱,及び2.帯磁率測定の準備を行うとともに,TL液体の研究をおこなうのに最適な孔径を探るため超流動の孔径依存性を調べることを計画していた. 1.比熱に関しては,測定試料‐冷凍機間の熱流をより高精度に制御するために低温部で作動するバルブの設計を行い、現在製作中である.2.帯磁率については測定系の設計を終えた段階で,24年度に製作を行う予定である.超流動の孔径依存については,孔径3.5,2.5 nm両方のねじれ振子測定系を新たに製作し,3.5 nmについての測定を行った.その結果,3.5 nmより大きい孔径では,超流動の抑制はバルク超流動のサイズ効果で説明され,次元性の効果は明瞭には現れないこと,一方,2.8 nm以下では急速に超流動の抑制が加速し,1次元特有の量子揺らぎが強くなっていることが明らかとなった. 24年度に孔径2.5 nmの測定を行い,量子揺らぎがより顕著に表れる孔径を探る予定である. また、今年度,細孔中4HeにTL液体モデルを適用した計算により,超流動的応答が観測周波数依を示すという理論的予測がなされた.そこで,孔径2.8 nmについて連成ねじれ振子を用いて2周波数による超流動の観測を行った.その結果,大きな周波数依存を観測し,初めて1次元超流動の動的応答の特徴を実験的にとらえることに成功した.同時に,比較対象としてフェルミ粒子である3He系の研究の重要性がさらに明瞭になった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.比熱についてはまだ測定に入っておらず、やや遅れているが,2.帯磁率測定の準備は順調に進んでいる.一方,細孔中4Heの超流動の測定からは,1次元超流動性とTL液体との関係について非常に重要な知見が得られつつある.総合的に見て本研究は順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
1次元超流動性とTL液体との関係を示唆する重要な結果が出つつあるので,24年度も3Heの実験と並行して4Heの超流動の実験を行う必要がある.一方,3Heの系については,4Heの実験で得られた知見をもとに孔径を選択・特化して研究を推進していく.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費のうち設備備品費は、帯磁率の測定系の整備に使用する予定である。消耗品費の大半は比熱測定のための寒剤(液体ヘリウム及び液体窒素)費として使用する予定である。
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