研究概要 |
常磁性状態における非容易軸方向成分(ab 面内成分) が高温で独立に秩序化している特異な部分成分磁気秩序を示すNdB4について、23年度は以下のような研究成果を得た。FZ法による単結晶育成を行い、従来以上に非常に大型でかつ純良な単結晶の育成に成功した。この新たに育成した大型単結晶を用いて超音波計測による弾性定数測定を行った。測定モードは横波のC44, C66 縦波のC33である。その中で、C44が13%近くの大きなソフトニングを示し、II相においてソフトニングがより大きくなる特異な挙動を観測した。このC44モードの既約表現は、結晶構造から見た場合のD4h対称性下のEg(Γ5+)であり、四極子の{Oyz, Ozx}、双極子の{Jx, Jy}もまた同じ既約表現に属する。群論的解析および、C44がII相でハード化せず上凸でソフト化している挙動から、4f電子軌道の四極子{Oyz, Ozx}とそれと同じ対称性の磁気双極子{Jx, Jy}も常磁性状態に近いような、揺らいでいることを明らかにした。また、これらの結果から磁気モーメントが、II相においてab面内で長距離秩序を示した場合には起こりえないことを示した。さらに、粉末中性子回折でII相に現れた磁気ブラックピーク群が、ab面内成分の磁気秩序によるものではない可能性を示し、II相における秩序変数が磁気双極子ではない高次の多極子である可能性を提示した。
|