研究概要 |
常磁性状態における非容易軸方向成分(ab面内成分)が高温で独立に秩序化している特異な成分分離および部分成分秩序を示すNdB4, NdCu2Si2およびNdCu2Ge2について24年度は以下のような研究成果を得た。 NdB4は11Bにエンリッチした大型単結晶をFZ法により作成することに成功した。また、この単結晶を用いてJ-PARCにて単結晶中性子回折実験を行った。また、米国オークリッジ国立研究所のHFIRにて粉末中性子回折実験を行った。また、平均場近似を用いた帯磁率のシミュレーションを行った。粉末中性子実験結果からNdB4に現れる中間温度II相での磁気散乱の大きさが非常に小さく、これから期待される磁気双極子の大きさが3価のNdイオンから予想される理論値3.27μBよりも非常に小さい0.45μB程度であり、普通の反強磁性秩序ではないことがわかった。また平均場計算の結果、および中性子回折実験結果の解析から、ab面内方向成分の第一秩序変数が{Tαx, Tαy}であり、{Tαx, Tαy}型が強く効いてるであろう反強八極子相互作用によって相転移が引き起こされ、{Jx, Jy}は第二秩序変数として取り扱うべきであり、ことを明らかにした。 NdCu2Si2およびNdCu2Ge2については、単結晶の育成を引き上げ法により行い、帯磁率測定を行った。また、平均場計算によるシミュレーションを行った。これら物質でもこれまで反強磁性転移と思われてきた相転移が、八極子相互作用により引き起こされるTαz型の反強八極子秩序転移である可能性が高いことを明らかにした。また、中性子回折実験や共鳴X線散乱実験により第一秩序変数が双極子か八極子なのかを決定できることを提示した。
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