研究課題/領域番号 |
23740266
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
岡崎 竜二 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (50599602)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | モット絶縁体 / 金属絶縁体転移 / 非平衡電子状態 / 電場効果 |
研究概要 |
本研究の目的は、伝導電子間のクーロン斥力の大きいモット絶縁体に、外場として電場を印加し金属化した非平衡な状態での熱力学量を測定することで、非平衡下の電子状態を直接研究することのできる新しい物性評価手法を確立することです。そのような電場下における非平衡電子状態の研究を行う上で、ジュール熱による温度上昇効果の寄与を厳密に取り除くことが必要不可欠です。平成23年度は、電場印加して試料が発熱した状態における温度を精密に評価するために、非接触で温度計測する手法を開発しました。具体的には発熱試料を黒体とみなして、そこからの放射強度を評価する放射温度計を導入しました。その計測システムをモット絶縁体Ca2RuO4に適応した結果、温度変化では説明できない巨大な非線形伝導現象を確認しました。さらに同様に非接触で温度計測する手法として、反射スペクトルに含まれるフォノン構造を指標としたサーモリフレクタンス法の開発に取り組みました。その手法を同様にCa2RuO4に適応し、反射スペクトルからの温度計測に成功しました。これら2つの非接触の温度計測手法により、電場下での各種物性測定の基礎となる温度測定に成功したといえます。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでの非線形伝導測定および電場下での物性評価における最大の問題点は、電場印加による試料の温度上昇効果をどのように取り扱うかという点にありました。本研究ではそのような外因的な温度上昇効果を取り除き、本質的な非平衡電子状態の研究を進めるために、電場下における試料温度の精密な評価方法の確立にまず取り組みました。具体的には2つの非接触での温度評価法を開発しました。まず発熱試料を黒体とみなして、そこからの放射強度を評価する放射温度計を導入しました。その計測システムをモット絶縁体Ca2RuO4に適応した結果、温度変化では説明できない巨大な非線形伝導現象を確認しました。さらに同様に非接触で温度計測する手法として、反射スペクトルに含まれるフォノン構造を指標としたサーモリフレクタンス法の開発に取り組みました。その手法を同様にCa2RuO4に適応し、反射スペクトルからの温度計測に成功しました。これら2つの非接触の温度計測手法により、本研究で進展させる電場下での各種物性測定において最も基礎となるべき温度測定に成功したといえるため、当初計画以上の進展があったと考えています。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、これまでに確立した非接触での電場下試料温度計測手法と合わせて、比熱・磁化測定法の開発に取り組み、モット絶縁体Ca2RuO4の非線形伝導現象の起源の解明に取り組みます。現在までの研究において、本物質では電流によって系の絶縁性を特徴づけているエネルギーギャップが減少するような振る舞いを示しております。今年度はこの系の電流印加時における磁化および比熱の計測を行います。目的としては、例えば比熱におけるフォノン項は原理的には電流には依存しないと考えられるため、電流による比熱の変化を捉えることによって直接電子比熱の電流変化を調べることができます。このような計測の前提となるのは、試料の温度を一定に保ち、純粋に物性値の電流依存性のみを調べることができるかという点にあり、昨年度の試料温度計測システムを十分に生かして電場下の比熱・磁化測定システムの開発に取り組みます。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の具体的な研究費の使用計画としては、主に計測プローブを自作するための工作・材料費や電子部品類などの消耗品が中心となります。昨年度の研究費によって、計測のための主な備品はすでに導入を行いました。また研究成果を発表するための旅費としても使用します。
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