研究課題
本研究では、伝導電子間のクーロン斥力の大きいモット絶縁体に外場として電場や電流を印加した非平衡な状態における熱力学量を測定し、非平衡下の電子状態を直接研究することのできる新しい物性評価手法を確立することを目指します。今年度は、前年度の予備的実験を踏まえて、酸化物モット絶縁体Ca2RuO4を対象物質として、電流通電下での放射光X線回折実験をKEKフォトンファクトリーBL8Bにて行いました。電流通電下での実験の課題として、自己発熱効果による影響をどのように取り除くかという点が挙げられます。本年度は、試料表面に金微小粒子を貼り付け、その格子定数を試料温度の指標とする実験手法を開発しました。この手法を用いて実験を進めた結果、Ca2RuO4の格子定数が、等温環境下であるのにもかかわらず、電流によって変化する様子を捉えました。さらに、前年度の実験と比べても、定量的に一致していることも分かりました。本研究で捉えた結果は、等温環境下で、試料体積という熱力学における基本的な平衡量が、電流という非平衡量によって純粋に変化しているということを示唆しています。この非自明な平衡量と非平衡量を結ぶ関係は、現在進展段階にある非平衡熱統計力学の研究を、固体物理学の観点からより推進できる可能性があることを示しています。
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