研究課題/領域番号 |
23740282
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
久保 勝規 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 先端基礎研究センター, 副主任研究員 (50391272)
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キーワード | 重い電子系 / フェルミ面 / 強磁性 / 強相関電子系 / 物性理論 / 超伝導 |
研究概要 |
重い電子系を記述する典型的な模型である周期アンダーソンモデルについて、磁場や磁性状態によって、電子状態がどのように変化するかを調べた。手法としては、重い電子状態の記述に適しているグッツヴィラー近似法を、有限磁化の状態を取り扱えるように拡張した。また、簡単のためにf電子間のクーロン相互作用は無限大に取った。 その結果、磁化が大きくなるに従って、常磁性状態の大きいフェルミ面の状態から、片方のスピンバンドのみフェルミ面を持つハーフメタルの状態、そして磁化の大きな場合には小さいフェルミ面の状態に変化することがわかった。このフェルミ面の変化は、常磁性状態では下部混成バンドのみが電子に占められているのに対して、磁化が大きくなると上部混成バンドも電子に占められるようになるためである。これらの状態間ではフェルミ面のトポロジーが異なっており、その転移はリフシッツ転移と呼ばれている。転移点近傍の振る舞いを詳しく調べた結果、今回の磁性の変化をともなうリフシッツ転移は、パラメーターによって一次転移にも連続転移にもなりうることがわかった。また、転移点近傍で有効質量が増大することも示した。 f準位を変化させたときの磁化や有効質量の変化は、強磁性体UGe2の圧力変化に類似したものが得られた。また磁場による磁化過程は、フェルミ面の変化が示唆されているYbRh2Si2の磁化過程に類似している。これらの物質と本理論模型の対応は今後の検討課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
グッツヴィラー近似法を、有限磁化・有限磁場の場合に拡張することに成功した。そして、磁性状態によってフェルミ面のトポロジーが変化することを示した。
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今後の研究の推進方策 |
グッツヴィラー近似法を、さらに拡張して、外部パラメータによってf軌道の価数や有効質量にどのような影響を与えるかを調べる。特に次年度では、これまで簡単化のために無限大にしていたf電子間のクーロン相互作用を有限の場合に拡張する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は解析的な計算に進展があったので、数値計算は次年度以降に行うことにした。そのため計算機を導入するための予算は次年度に使用する。
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