最終年度は、繊毛の多体系(1次元および2次元配列)の集団ダイナミクスについて、前年度までに構築した剛体回転子モデルを用いて数値解析を進めた。その結果、円軌道を描く回転子について、自己駆動トルクの周期パターン(1次および2次のフーリエ成分の振幅と位相)、平面基盤に対する軌道の傾き、回転子間の距離をパラメータとして変えて、繊毛の配列が描く時空パターンの動的相図を描くことができた。時空パターンのうちメタクロナル波(進行波)については、駆動トルクが最大になるときの繊毛の運動方向と進行方向が平行になるシンプレクティック波と、反平行になるアンチプレクティック波を再現することができた。更にこれらの波が共存する状態や、波面がジグザグになる状態、乱流状態の合わせて5つの時空パターンを同定した。一方、2本の繊毛の相互作用については、海外の複数の実験グループから、クラミドモナスおよび光駆動コロイドを用いた検証方法が提示されたため、実験との比較のため追加的な数値計算を行なった。これらの結果により、繊毛の集団ダイナミクス、特に進行波パターンの理解が進展し、実験系との定量的比較の可能性が視野に入る所まで来た。現在これらの結果を3報の論文にまとめている所である。
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