研究課題/領域番号 |
23740287
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
渡辺 宙志 東京大学, 物性研究所, 助教 (50377777)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 相図・臨界現象 / 非平衡輸送現状 / 分子動力学法 |
研究概要 |
三次元Lennard-Jones粒子系の気液臨界点における普遍性について調べた。分子動力学計算により気液共存状態を再現し、気液共存密度を温度の関数として求めることで気液共存線を決定した。直線径則を援用することでBinder比から臨界点を決定し、気液共存線から磁化の臨界指数を、界面張力から相関長の臨界指数をそれぞれ求めたところ、磁化の臨界指数は三次元イジング普遍性と同じ値を示したが、相関長の臨界指数は有意にずれた。しかし、界面張力を復元力とした界面張力波の影響により界面表面は揺らぎ、実効的な面積が増えるため、界面が完全に平坦だとすると界面張力を過小評価する。さらに、この実効的な面積の増え方も温度依存するため、ストレステンソルから求めた界面張力の温度依存性は正しくないことがわかった。そこで、界面揺らぎの大きさの有限サイズ効果を調べる事で真の界面張力の値を推定し、その温度依存性から相関長の臨界指数を調べたところ、三次元イジング普遍性の値と誤差の範囲で一致した。これは、相関長の臨界指数を調べる為には、界面張力波の影響を正しく考慮する必要があることを示している。 上記と合わせて、並列分子動力学法コードの公開、開発を行い、その高速化、並列化の技術普及に努めた。特に、高並列化時に問題となるシステムノイズの影響について調べた。まったく同じ計算を複数回繰り返したところ、計算結果は完全に一致しているにもかかわらず、各プロセスの計算時間は大きく揺らぐことがわかった。これは並列化効率の低下がプログラムに内在する問題ではなく、確実にシステム側の影響であることを示す。また、1000プロセスを超えるような並列計算においては、Hyperthreading Technologyの有無により並列化効率が大きく変わることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題の研究対象である気液混相流の研究においては、詳細な相図、特に気液共存線が必要となる。そこで、温度制御は平衡化のみに用い、測定時には温度制御、圧力制御を必要しない方法を考案、実施した。これにより、安定的かつ精密に気液共存線が決定できることを示した。さらに、気泡の性質の解明、特に界面張力の正しい推定が重要となるが、今年度の研究により、分子動力学計算における界面張力波の影響が重要であることがわかった。これらは今後、気泡生成、気泡成長といった非平衡過程を研究する上で重要な知見である。
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今後の研究の推進方策 |
主に気泡生成過程におけるミクロな物理量測定を行う。特に気泡生成、成長時の力学平衡の過程の破れ、及び非平衡状態における界面張力測定を行う。また、急減圧液体における多重気泡生成、およびその成長過程を追う事で、圧力を介した気泡間相互作用を推定し、気泡分布関数の発展方程式を書き下す。
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次年度の研究費の使用計画 |
国内外の学会参加、および計算資源購入、論文出版費用に充てる。
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