研究課題/領域番号 |
23740289
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
齊藤 圭司 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (90312983)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 国際情報交流、 インド、イタリア、ドイツ |
研究概要 |
23年度の目標は、i) 非平衡ゆらぎに関する重要な予言である「相加性原理」を具体的なモデルを使って検証すること、ii) 微小輸送系における熱電効果における熱効率の理論を構築すること、であった。 「相加性原理」の検証では、古典調和格子を用いた研究をすることで、非常に明快な研究ができた。非平衡系の熱流ゆらぎを考えるために、高次ゆらぎを生成する生成関数の形式的な厳密解を導出し、それと「相加性原理」から予言される熱流ゆらぎを比較するするという単純明快な研究を行った。調和格子は様々な輸送形態を示すので、この研究により様々な輸送形態を示す系でゆらぎを考える入り口が出来たと思われる。調和格子における異常輸送領域でのゆらぎの研究は、異常輸送を示す異なるモデルでの研究に受け継がれいる。そこでも非自明な研究結果が報告されており、今後もさらなる研究が見込まれる。 熱電効果における熱効率の理論では、特に磁場の影響を研究した。線形応答領域に限定することにより単純明快な議論を行うことができた。解析の結果、熱力学第2法則のみでは有限パワーとカルノー極限の共存は排除できないことが分かる。この可能性を問うために、磁場の影響によりゼーベック係数が磁場反転に関して非対称になるモデルを考案した。たいていのモデルでは、ゼーベック係数は磁場反転に関して対称になってしまうので、こういったモデルの提案自体が非自明である。磁場の影響を研究するための、最も重要な問いかけとモデル作りが出来たという意味で、初年度のこの問題に関する研究の目的は達成されたと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度は、2つの目標があった。i) 非平衡ゆらぎに関する重要な予言である「相加性原理」を具体的な系を使って検証すること、ii) 熱電効果における熱効率の理論を構築すること、である。この2つの大きな目標はおおむね達成されたと言ってよいであろう。i)では、具体的なモデルを厳選しその中でかなり明快な答えを出すことが出来た。ii) では特に一般論を構築することでその中から新たな問題提起をすることができた。その意味で23年度だけでなく、24年度にも続く研究ができたと言える。
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今後の研究の推進方策 |
23年度でおこなったように、国外の研究者との連絡を密に取り研究を行っていく。相加性原理の研究では、異常輸送を示す相互作用のない粒子系モデルを使って解析的に研究を推進していく。目的は、解析的に粒子密度分布を導出すること、そのとき局所平衡が成立するかを問うこと、そしてそれとカレントゆらぎとの関係を明らかにすること、である。これらがすべて達成できるとは限らないが、達成困難なときは数値的に目標を達成したい。研究はインド、フランスなどの研究者との議論を通して行っていく。 熱伝効果に関しては、とくにネルンスト効果に焦点を当てた研究を行いたい。この問題は主にドイツの研究グループと連絡を密にとり、取り組んでいく。
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次年度の研究費の使用計画 |
主な研究費の使い道は、旅費として使う予定である。この研究は国際的な共同研究として行っているためである。特に共同研究者がいるインドおよびドイツの渡航を予定している。
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