研究課題/領域番号 |
23740307
|
研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
岸本 哲夫 電気通信大学, 先端領域教育研究センター, 特任准教授 (70420239)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | ボース・アインシュタイン凝縮 / 量子エレクトロニクス / 極低温量子ダイナミクス |
研究概要 |
量子渦を描き込み可能な大きさのBEC生成に向けて、冷却原子の光双極子トラップ(ODT)への効率的なロード方法を模索した。一般的には磁気光学トラップ(MOT)で原子を冷却・捕獲した後に圧縮MOT(CMOT)を行い、保存力ポテンシャルに移して強制蒸発冷却を行う。今回、別の方法として、通常CMOTで行われる冷却光周波数やリポンプ光強度の掃引操作の代わりに、穴空きリポンプ光にデポンプ光(周波数固定)を照射することにより、ODTに87Rb原子を連続的にロードする方法を検証した。この実験では、意図的にODTの深さを数mKと設定してシュタルクシフトを大きくし、デポンプ光の周波数依存性を調べやすくした。この条件で、冷却光の周波数掃引を行う一般的な手法により原子をODTに移行させると、移行される原子数は140万個程度、温度は約400μKであった。次に、穴空きリポンプ光とデポンプ光を照射した場合、デポンプ光の周波数はシュタルクシフトを受けていない原子に対して|5S1/2, F=2>から|5P3/2, F ’=2>の遷移に共鳴の条件で最も移行効率が良く、移行原子数は120万個、温度は約360μKであった。このことから、穴空きリポンプ光とデポンプ光照射の組み合わせの手法でも、冷却光の周波数を変化させた場合と同程度のロード条件が達成されることを示せた。また、トラップ中での渦の時間発展の実時間観測に向けて、空間分解能数μm程度の結像系の構築を行った。真空装置の大きさの制約から、長作動距離(50mm程度)で分解能数μm程度の結像系が必要となるが、今回、市販の高分解能レンズ(NA=0.554、焦点距離=40.0mm)の評価実験として、波長780nmの光を用い、直径1μm(渦芯の大きさのオーダー)のピンホールを17倍程度に拡大結像し、光軸に波長板や5mm厚ガラス板が入った状態で分解能2.5μmを得た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
量子渦を描き込み可能な大きさのBEC生成に向けて、効率的に光双極子トラップへ冷却原子を捕獲する方法として、レーザー冷却光の周波数掃引を必要としない新しい捕獲方法を見出し、さらにその原子集団の強制蒸発冷却を行っている段階である。また、トラップ中での渦の時間発展の実時間観測に向けて、空間分解能数μm程度の結像系の構築を行った。これらの点から、新しい実験技術を開拓しつつ、必要となる要素技術を構築した段階となっており、おおむね順調に進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
実験の面では、H23年度末の研究室の移転に伴って実験装置を全て再構築する時間を要するため、遅れが予測されるが、装置再構築の際に、これまでに開発した要素技術を装置本体に組み込む予定である。また、強制蒸発冷却を行ってBECを生成後は、オフセット磁場やrf磁場を掃引しながら幾何学的位相を用いて量子渦を描き込めることを実証する。その後、任意形状の量子渦描き込みまで推進する計画である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
H23年度中に年度末の研究室移転が決定したため、移転計画に伴い全ての実験装置を再構築する必要があったことを考慮し、既存装置へ行う変更点や新たに必要な光学系の一部の組み込みをH24年度の再構築時にずらすことにしたことに伴う、繰り越し分の光学部品の購入(1,200千円)とラジオ波発生用電子部品(400千円)、マイクロ波電子部品(200千円)の他に、H24年度に計画している非破壊測定へ向けた光学部品(700千円)の購入に充てる。
|