研究課題
本研究で目指す中性ビーム合流実験を行うためには,負イオンビームの光中性化による,高速中性粒子ビーム生成技術の開発が不可欠である.一方,電荷を持たない中性の高速粒子ビームは電磁場による軌道制御が困難であるため,中性化する前にイオンビームの速度,プロファイルを制御しておくことが重要となる.平成23年度は,負イオンビームの診断,最適化のプロセスに重点を置き,実験装置の設計製作を中心に研究を行った.以下に実績を示す.1.セシウムスパッタ型負イオン源から引き出された負イオンをビーム化,輸送するためのビームラインを設置し,ワイヤー回転型のビームプロファイルモニタ,及び蛍光板を導入した.エネルギー20 keVで引き出した負イオンビームの二次元プロファイルを測定して,軌道計算へフィードバックを行い,引き出し部アインツェルレンズの最適化を行った.2.負イオンビームの質量を分析するための60度偏向型電磁石を設置し,イオン軌道計算にもとづいてポールピース及びマグネットチャンバ-の設計を行った.XY同時収束位置にスリットを設置することでM/ΔM=100程度で負イオンビームの質量分解が可能となる予定である.3.光中性化ポイントでのビームプロファイルを制御するために四重極静電レンズ(三連型)を製作してビームラインに組み込み,動作確認を行った.また中性化された粒子を検出するための二次電子増倍管を購入し,支持機構の設計を行った. 以上のように,実験装置開発は順調に進行し,必須コンポーネントの設計もほぼ完了した.平成24年度前半には実験装置の運転を開始して合流ビーム実験のテストを行い,測定したデータの検証を行う予定である.
1: 当初の計画以上に進展している
中性粒子ビームとイオンビームの合流により超低エネルギー原子分子衝突実験に挑戦する,という研究目的に沿って,順調に実験装置開発が進んでいる,さらに,他分野の研究者との議論により,中性ビームの生成技術が当初の計画以上に広く応用可能であることが明らかになってきており,今後の共同研究など発展性に期待が持てる.
当初研究計画に沿ってビーム合流実験を行い,星間空間におけるイオン分子反応ダイナミクス解明を目指していく.理化学研究所で開発中の極低温イオン蓄積リングも順調に進行しているため,計画通りのマシンタイムが獲得できると予想される.また,合流ビーム実験以外の応用も見据えながら開発を推進していく.
昨年度はビーム軌道計算,設計が中心となり,一部物品の調達に若干の遅れが出ているが,一方でひととおりの設計が完了したため,次年度早々に装置製作,物品調達が開始できる状態である.研究費の主な使用用途は実験装置を構成する各種コンポーネントの製作費,制御系統の整備費となる予定である.
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (12件)
Physical Review A
巻: 85 ページ: 020701(R)
Physica Scripta
巻: T144 ページ: 014010